阿含宗を去った理由

当時、私は喜び喜び阿含宗のご奉仕に参加させてもらっていた。阿含宗に何の不満不安もなかったと言ってよい。ただ、映画、ビデオの上映会のとき、会場に来られた人たちのなかで、腰をさすり膝をさすっている人たちに映画、ビデオを観てもらうより少しでも痛みをやわらげることができればどれほど素晴らしいことかと思っていた。

こんな時目にしたのが、世界真光文明教団の教え主であった関口氏の書かれた『「手かざし」の大奇跡』という本である。疑うとも信じなくとも、手をかざすだけで人の痛みが取れたり、運勢が好転したりするというのである。本の末尾に道場の所在が記されていたので阿倍野道場を訪ねてみた。

一階は駐車場になっていて、入口を入ると大きな下足箱があり、二階にお上がりくださいとの張り紙があるので恐る恐る上がってみた。二百畳はあろうかと思う部屋に十組くらいの人たちが御神殿を背に、正座をして手かざしの受け施しを行っていた。

そのうちの一組が手かざしをやめてスラリとしたというよりズングリしたといった方がいい女性が対応してくれた。

「導士を務めさせていただいています腰坂と申します。こちらには初めてでしょうか」と尋ねられたので、初めてですと答えると、何はともあれまず手かざしを受けてみませんかと言われ、御神殿の前に案内された。

名前を聞かれ「佐古です」と答えると、これから神様にごあいさつをいたします。私と同じようになさってくださいと言われ二拝三拍手して、是より佐古様を清めさせていただきます、終始格段なる御守護お願いいたしますと言い、一拝四拍手して向きなおり、お浄めをさせていただきますと言われ、よろしくお願いいたしますと答え、座布団に座り直して、瞑目合掌していると、導士さんが三拍手して力強い声でのりごとをのりあげ手かざしが始まった。

額のお浄めが始まると額が引っ張られる感じがして、内側からモコモコと盛り上がるように感じた。

額のお浄めを十分ほどで終わると導師さんに背中を向けて座りなおし、後頭部のお浄めが始まる。後頭部から首筋にかけて暖かくなるのを感じながら世間話になった。

背中を重点的に四十分ほどもお浄めしていただいただろうか、これでお浄めを終わらせていただきますとの声で、お浄めが終わり、二拝三拍手一拝四拍手で、互いにありがとうございましたで終わった。

導士さんが、次回来られましたときは、記帳台の所で来場者名簿に名前を書いていただいて、お浄め御礼の短冊に名前を書き御奉納袋に入れて御奉納箱に入れ、お参りして下さい。私は一切の手順をすっ飛ばしてしまっていたのだ。

此のあと、時間がありましたらと、いろいろ教えていただいた。御奉納袋に入れて御奉納するのは、裸銭を投げ入れることは神様に大変ご無礼になるとのこと。お浄め御礼の額は御志で、値段の決まりはないとのこと、帰るときは先ず神様にお参りして、入口の方に下がり、来場者の皆様に、本日はありがとうございましたとお礼を言って帰ること。内心赤面しながら嬉しく教えてもらった。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『市井の片隅で』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。