2008年

日本灰色の空

二〇〇八年が明けて二週間経った。毎日雨模様の天気が続いている。年が明けてからおそらく雨の降らない日はなかったのではないか。終日降り続くわけではないが、降ったりやんだり、毎日灰色の空に覆われている。

そんな灰色の空の下で、正月明けの最初の行事はÉpiphanie(エピファニー)というカトリックの公現祭だ。一月六日のこの日フランスでは子供たちがGallette desRois(ガレット・デ・ロワ)というパイを食べる。パイの中にはfève(フェーブ)という小さな人形(本来はそらまめだそうだ)が隠されていて、切り分けられたパイに、それが入っていた子供が王様(王妃様)の役をもらい、おまけについている王冠を被りそのパーティの主役となるということだ。

この時期、どのパン店の店先にもずらりとガレット・デ・ロワが並ぶ。スーパーではそれこそ山のようにパイが積み上げられている。私も試しに近所のパン店で買ってみた。一人なので小さいのを選んだ。

パイの中身はりんごとチョコレート。食べてみるとまあ普通のパイだが、チョコレートとのマッチングはあまり良いとは言えない。会社の食堂でも特別メニューとして出される。フランス人に聞くと普通中味はアーモンドだそうである。食べてみるとそのほうがうまかった。

食堂で隣に座ったグレゴリーは「うちでは人形が当たった人が歌を歌うんだ」と言う。それを横で聞いていたジャン=フランソワは「それはいいアイデアだね」と。おそらくいろいろな楽しみ方があるのだろう。私の買ったガレット・デ・ロワは一日では食べきれず、四等分して毎日食べ続けるはめになった。二日目に人形が出てきた。だが一人で王様の冠を被って食べるのもこっけいで寂しくなる。

正月明けのもうひとつの行事は、一月五日スタートのダカールラリー(何年か前から出発がパリからリスボンになったのでいまはこう呼ぶようだ)だ。今年はコース途中のモーリタニアでテロの危険があるとのことで出発直前で中止となってしまった。テレビでは連日このニュースを報じている。選手の中には悔し泣きしている人もいた。

フランス人によるとダカールラリーだけを専門にする会社もあるそうで、中止となれば倒産するケースもありうるとのことだ。続いてSoldes(ソルド)と呼ばれるバーゲンセールがある。フランスは政府による規制が強い国だからこのバーゲンセールが出来る時期も法律で決められている。一月から二月の冬のバーゲンと七月の夏物バーゲンの年二回である。

今年は一月九日より始まり二月の中旬までフランス全土がバーゲンセールとなる。パリでは多くが二月十六日までということだが、レンヌでは二月十九日までという店も結構見かけた。街の繁華街を歩くと各店のショーウインドーに大きなSoldesの文字が貼られ、三十%、五十%引きなどの表示があちこちで躍っている。どんよりした冬空の下、大きな買い物袋を下げた人たちが行き交う街の風景はこの時期のフランスの風物詩である。

私は昨年、バッグと靴を買った。服なども買いたいが、何せこの体型なので残念ながら合うサイズがない。Sサイズを買っても、胴周りは合っても袖丈が合わない。ほとんど手先まで隠れてしまうほど長くて何度もあきらめざるを得なかった。私の手が短すぎるのか、フランス人の手が長すぎるのか……。

このSoldesの時期にフランスに来て、免税で買い物して帰るという日本人も大勢いるに違いない。だがフランスに住む私には残念ながら免税の特典を受けることができない。

※本記事は、2018年10月刊行の書籍『ブルターニュ残照』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。