機内ではどうだろうか。エール・フランスでは機内食などのサービスを受ける際、ほとんどの乗客はキャビンアテンダントに“メルシー”と言う。だがJALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない。ほとんどの乗客が無言で受け取る。

私は成田から前橋の自宅までスカイライナーと新幹線を乗り継いで帰るが、混んでいる車内を移動する際、“すみません”と声をかける人は少数派で、多くの人が身体がぶつかっても何も言わず通り抜けてゆく。一方TGVの車内ではこんな場合、必ず“パードン、ムッシュウ”とか“エクスキュゼモア”と声をかける。

アパートのエレベーターで乗り合わせても、日本では無言だが、フランスでは“ボン・ジュール、ムッシュウ”、“ボン・ソワー、マダム”と必ず挨拶する。知らない人同士の間で挨拶をしない日本人と挨拶をするフランス人。

もちろん日本人でもフランス人でも知っている同士の間では挨拶をする。それは同じである。だが、見ず知らずの他人同士の公共の場でのコミュニケーションで、この日本人の無言というのはちょっと異様に感じられる。