ただし、導入講義の開講時期である2回生春学期末に除退する学生は欠席回数と無関係であることに注意しなければならない。むしろ、彼らの除退行動に直接影響を与えているのはリテラシー因子で、プラス有意(p<.01)であった。前節で見た通り、リテラシー因子はレポート作成に関する自己評価から抽出された因子で、課題遂行の基本リテラシーに関する意識であると解釈した。もし、この因子を好意的に解釈すれば除退にはマイナスの影響として出るはずがそうならなかった。これはなぜか?

本来レポートは膨大な情報をコンパクトにまとめる作業を通じて完成させるものであり、これ自体は課題遂行の前提である。それを自己評価にわざわざ記述するのは、レポート作成を意欲的に取り組むモチベーションが喪失したのか、意欲的に取り組もうとしてもその方法などが分からないのか、いずれかの本音を抱いていると思われる。それをシート上で表明すれば読み手(=担当教員)の心証を悪くするかもしれない。こうした配慮が、《漢字や文法のミスを少なくするようにした》《メモを取るようにした》などの当たり障りのない文章しか書きようがなかったのかもしれない。

こう解釈するとリテラシー因子がプラス有意となった理由も納得できる。つまり、この因子の高い学生は講義に欠席するほどまで学びから逃避してはいないが、(動機はともかく)意欲的にレポート作成に取り組む心的状況ではないと解釈できよう。そして、こうした心的状況は持続する可能性があり、3回生春学期末に除退する行動にもプラス有意(p<.01)で影響を与えていたことで示唆される。

一方、3回生春学期末で除退する学生は注意力因子からもプラス有意(p<.01)で影響を受けた。この解釈については後で述べる。

次に、欠席回数や成績がシートに現れる品詞にどの程度影響を受けるのかを確認する。まず、成績は名詞数の影響をプラス有意(p<.01)で受け、欠席回数の影響をマイナス有意(p<.01)で受けた。第2章でも触れたが、導入講義ではシートへの記述量が多いほどルーブリックで高い評価を与えた。

そのパターンを学んだ学生はシートでたくさんの文章を書こうと意識しただろう。すると、使う名詞数も必然的に多くなり、その影響が出たと思われる。欠席回数が成績にマイナスに影響(p<.01)するのは自明だろう。

一方、欠席回数は動詞数の影響をマイナス有意(p<.01)で受けた。導入講義を真面目に受講する意識の低い学生はシートやレポート作成も意欲的に取り組まないだろう。すると、文章の絶対量も少なく、必然的に動詞数が少なくなるだろう。シートの場合はルーブリックを通じて低い評価しか与えられなくなるので、そこから修学意欲が減退して欠席しがちになったと考えられる。

※注1)構造方程式モデルは共分散構造分析とも言われ、回帰分析と因子分析を組み合わせてさまざまな仮説を統計的に検証する手法である。これについては次の文献が平易である。朝野煕彦・鈴木督久・小島隆矢『入門共分散構造分析の実際』講談社、2005年。