ティーバッグ時代が到来する前後での違いについて考えてみたい。端的に、また浅学承知の上で、敢えて言うならば、揉捻工程が異なっている。

伝統的なオーソドックス製法では、萎凋後の茶葉は、揉捻機(ローラー)だけを使って揉み上げる。ポットでゆっくりと時間をかけて抽出するための紅茶を作る。紅茶葉の大きさは、現代の中心グレードであるブロークンタイプの茶葉より大きめのホールリーフタイプとなる。

次の発酵工程では、酸化酵素による発酵の進行度合いを見極め、時間を切って終点とする。秘訣はきっと、赤褐色の水色がより濃くなるよう、そしてグリーニッシュな青い香りが消えるとともに紅茶らしい香気が豊かに生成されながらも、発酵し過ぎないようにこの工程を終了しなければならない。

また、次の乾燥工程では、昔の乾燥機ゆえに少し高めの不安定な温度処理となってしまうような焙煎即ちロースト的な効果もあった上で、大きめの紅茶葉の水分を最小化するように乾燥し香味を保持して安定化させる感じであろうか?

一方のティーバッグ用紅茶の製茶は、ファニングスなどのブロークングレードをメインとした紅茶製法で、オーソドックス製法の場合も、CTC(クラッシュ・ティアー・カール)製法の場合も、必ず茶葉を先ず小さく切断するためにローターバーンというミンチ機のような切断機を使う。

【画像4】現在の紅茶工場では、普通に見られるローターバーン

萎凋後の葉は、一気に小さく切断されることによって表面積が格段に増加する。その結果、酵素によって酸素を取り込む酸化発酵のスピードが効果的に上がり、揉捻・発酵に要する時間が大幅に短縮される。結果として製茶時間を、大変短くすることができるのである。

その反面、揮発性が高い青葉臭などの青みの(生っぽい)香気がより多く残るため、カラッとした、言い換えれば熟成した香味の仕上がりにならないのだろう。もちろんこのような青みのある香りの紅茶をフレッシュで新鮮ととらえる向きもある。

紅茶の世界も、ビジネス最優先で売上とコストを追いかけざるを得ない経営環境下、昔のスタイルのあの懐かしのセイロン紅茶が、主流に復権することは期待できないだろう。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『紅茶列車で行こう!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。