花は花として

「日本史だから、メグも言いたい事あるかもしれないけど、縄文」

「私、江戸文化のヒトだから」

「えー、勘当された若旦那が捨て台詞を吐きまして、お天道様と米の飯はついて回る、なんてんで見得を切りまして」

「唐茄子やぁ唐茄子、って、ここで唐茄子屋政談?」

この二人の知識量の奥底はどこまで広がってるんだろうと、時々思う。

「日本人は米の飯って。縄文から弥生って、単線型に歴史は動いたんだろうか。考えたこと、ある? パリのおかみさんたちがパンがない、ってヴェルサイユに押し寄せた時の心情って、闘う気持ちだったんだろうか」

「まぁ、パンがないのならケーキを召しあがられたら」

「その台詞を、マリー=アントワネットは言ってないそうだけど」

「まぁ、チャーハンがないのなら饅頭を召しあがられたら」

「うん、一度どんなもんだか食べてみたいよね。魯迅の『故郷』に出てくるルントウが食べた焼きめし。美味いとも思えないけど」

「そういえば、ウイキョウ豆ってさ、コンイーチーが」

「すいません。もう私ついて行けません。で、縄文が何なんですか?」

「さすがに、ピントははずさないね。いや、縄文人は、新しい薄手の土器とか稲作とか、こりゃ新しい、って簡単に受け入れたのかなって話。縄文って、一万年。そんなに簡単に切り替えられるんだろうか」

「ウチのお祖父ちゃんは、戦後はアメリカのものが新しくて正しいって、何でも真似したって言ってましたけど」

「二人は普通の恋をして結ばれました。でも、奥様は魔女だったのです」

恵さん、いい加減にして。

「ダーリンってフツーの会社員っぽいけど結構豪邸に住んでんのよね」

「縄文人だって、栗の木の巨柱で作った巨大建築物に住んでたのかもよ。でも、ここでジャズの話したら怒るよね」

いつだって、どこかに冗談のタネや余談を潜ませているのがヒロさんや恵さんなのだけれど。まだ大して飲んでないのにこれだ。でも本題に戻ってください。

「日本列島の人たちが、田んぼと米を受け入れるのに何百年もかかったっていう説がある。田んぼで米作りしたら、その土地は手放せないよ。そこから土地を奪い合う歴史が生まれる。争いは、人殺しを正義にするんだ。

自然の恵みをみんなが分け合っていればいいのにね。それにこの列島には、本当に豊かな自然とキレイな水があった。縄文人はそんな争いよりも自然の恵みを優先したって考えてもいいよね」