ピエトロ・ジェルミを思い出す

昼食はガラス屋根の明るく洒落たレストランだが、暑さに気を使ってクーラーをかけてくれたのはありがたい。メインはポークステーキだったが、ここまでに食事でビーフに一度もお目にかからないのはBSE(狂牛病)への配慮か。

これから東海岸のタオルミーナまでの約二五〇キロの長丁場である。途中エンナからパレルモ~メッシーナの高速道路に入る。シチリア中央部のこの辺は緩い起伏にとんだ丘陵地でなかなか良く開発された農地が多い。牧場、オリーブ畑、時折アーモンドも見られるが二月ごろ花が咲いて見事だという。全体的に大農主義で大地主が開発していると思う。

若い頃「イタリア式離婚狂想曲」という映画を観た。出だしからマルチェロ・マストロヤンニが昼下がり窓際のソファーに長々と寝そべって鼻毛を抜いている。いかにも気だるいムードである。彼は南イタリアの大地主で貴族である。何も目的がない彼に愛人ができる。カトリックのイタリアでは離婚ができない。

地主に目的ができた。何としても妻を完全犯罪で殺すことである。ドタバタが始まる。フィナーレは忘れてしまった。けれどもシチリアの地主はこんなものだという先入観が私にしみ込んでしまった。

演出のピエトロ・ジェルミのコメディタッチに驚かされる。ジェルミは俳優でもある。誰をも泣かせた名作「鉄道員」の主演兼監督。また、同じく彼の主演・監督作「刑事」の主題歌は、私の歌える唯一のイタリア語の歌だ。

「Sinno Me Moro」(歌:Alida Chelli、作詞:Pietro Germi・Alfredo Giannetti)より

“Amore, amore, amore, amore mio,

In braccio a te me scordo ognidolore.”