映画や漫画で知っている物語があるなら原作にあたってみる

手っ取り早い読書のきっかけとして、まずお勧めするのは、かつて、ちょっと見聞きしたことのあるストーリーに対して、「原作にあたる」というものです。要は、鑑賞したことのある映画やドラマ、芝居や漫画などなんでもいいのですが、その原作本に触れるのです。この方法で私は、次のような本を読んできました。

・小学時代に、若わか桜さ木き虔けんの『宇宙戦艦ヤマト』

・非モテの低迷期に、谷崎潤一郎の『痴人の愛』

・情緒不安定な時期に、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』

・恋愛倦怠期に、ロバート・J・ウォラーの『マディソン郡の橋』

・カタルシスを喚起したいときに、鈴木光司の『リング』

・医療に明け暮れていた頃に、海堂尊の『チーム・バチスタの栄光』

・悩みを抱えていたときに、新田次郎の『劔岳点の記』

このなかで、『マディソン郡』と『リング』は興味深く読めましたが、『ヤマト』と『オペラ座』はちっとも面白くなく、途中でやめてしまいました(『ヤマト』はアニメの方が原作ですが)。谷崎文学は『卍まんじ』にも言えますが、映像も含めてそれはそれで官能的でした。『チーム・バチスタ』は、可もなく不可もなく、ドラマのクオリティーと同じでした―伊藤淳史さんの演技がよかったのでしょう。『劔岳』は、原作もよかったのですが、やはり、山々の風景や登頂シーンは映像の方に軍配が上がりました。

七冊の経験をもって結論付けるのもなんですが、原作にあたった場合の面白さの確率は、概おおむね六割強でした。作り込まれた映像や芝居の方が迫力的で、原作は冗長ということもあると思いますが、いきなり知らない本を読むより、知っている物語の方が内容の理解も早く、本を好きになるきっかけになるのではないかと思います。また、原作と映像との比較もできますし、両者で結末が違ったりすることも多いので、より楽しめます。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『非読書家のための読書論』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。