【第1章】先んずれば相続税を制す

相続税の計算法を知っておこう

先ほど、相続税の計算方法の基本をご説明した際に、課税遺産総額が多ければ多いほど、より多くの相続税を支払わなくてはいけないとお話をしました。

課税遺産総額は、総遺産額から借入金や葬儀費用、そして基礎控除を引いたものでした。借入金や葬儀費用や基礎控除は、総遺産額がいくらであっても変わらないので、総遺産が少なければ、正確には少なく見せられれば、遺族が支払わなくてはいけない相続税を安くすることができます。

そのための方法はいろいろとありますが、もっとも単純で分かりやすいのが、「贈与」です。日本では年間110万円を超える財産を個人から受け取ると「贈与税」がかかります。逆に言うと、年間110万円までなら無税で財産を渡すことができます。このように何年にもわたって、年間110万円まで贈与しても贈与税がかからない制度を暦年贈与制度と言います。

先ほど例に出した被相続人の場合、総資産額が1億1000万円で課税遺産総額が5800万円でした。この方には相続人が二人いました。仮にこの相続人たちに年間110万円ずつ、亡くなるまでの20年間財産を贈与していたとします。すると、110万円×2人×20年間=4400万円が総資産から減り、総資産は6600万円になります。

同時に課税遺産総額も1400万円に減ります。2015年の相続税の増税で、それまで6000万円だった課税最低限が、3600万円に引き下げられました。この件はいろいろなところで話題になりましたので、ご存知の方も多くいると思います。

相続の場合、資産がいくらあっても控除される基礎控除というものが適用されます。基礎控除は3000万円+600万円×法定相続人の数という式で表されます。相続人が一人の場合は、3000万円+600万円×1=3600万円となるため、この金額が課税最低限となるのです。課税最低限が3600万円ということは、課税遺産総額がこの額に達しない場合は、相続税は一切かかりません。

つまり、さきほどのように贈与によって資産を生前から相続人に渡しておけば、仮に1億円超の資産を持っていたとしても、相続税をまったく払わなくても良くなるのです。「自分が死ぬのを見越して、20年もちまちまお金を渡すなんて、めんどうくさくてできるか!」という声もあろうかと思います。もちろんお持ちの資産額によっても、必要な年数も変わります。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。