新採2年目にして入学者選抜の主担当!? ~大シゴトの後は大トロ尽くし~

次年度も分掌は教務部で変わらなかった。しかし、2年目にして大役を仰せつかることになってしまった。それは入学者選抜(略称:入選)の主担当を任せられたことである。“入選”は、どこの学校でも一般的には、若手が主担当として取り仕切ることはまずない。戦場に譬えるなら、初年兵に指揮官を任すようなものだ。

当然、先輩方を使えるわけもなく、連日夜遅くまで自分一人だけで準備に追われた。入選が終わった時、教頭が私のところにやってきて、「校長先生のお誘いである。今日は空いているか。労をねぎらうので付き合って欲しい」とのことだった。

そんな訳で、寿司屋と高級バーの“接待”を受けることになった。寿司屋では“大トロ尽くし”。カウンター席で、校長と教頭の二人の間に挟まれて、「食え」「食え」と言われたが、残念ながら味はわからずじまいだった。寿司屋の後は「まだ時間はあるだろう?」と、タクシーで教頭行きつけのお店へ。いかにも高そうなバーだった。これはまさに“都会の学校”だった。

ところで、その翌朝、“朝のお勤め”を終えた私のところに、例の教育係のお局様がやってきた。また小言を言われるのかと構えていると、「たった一人で、本当によくやりましたね。私はずっと見ていましたよ」と。いつもの鬼の形相が女神のような眼差しだった。

その時ばかりは、堪えても堪えても、こみ上げてくるものが溢れ出て、どうにもならなかった。前夜の校長、教頭のもてなしよりもパンチが効いた“一撃”であった。たったの一言で私は撃沈した。さすが教育係! 厳しさの中の……。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『ザ・学校社会 元都立高校教師が語る学校現場の真実』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。