除退予備軍をあぶり出せ!?

除退者の類型

せっかく大学に入学しても、さまざまな理由から除退する学生群は必ず存在する。NPO法人NEWVERYが運営する日本中退予防研究所注1は、中途退学を経験した元学生を中心にしたインタビュー調査から、除退者の類型を図表1のようにまとめている。これを見ると、除退の要因には初期型・失速型・貧困型の3つに大別できることが分かる。

写真を拡大 [図表1]中途退学の類型

第1に、初期型は入学した早々に顕在化するもので、偏差値の低い高校出身者だったり高校在学中における評定平均が低い「典型的初期(落ちこぼれ)型」や、安易に進路先を決めたことによる「学科ミスマッチ型」が典型として挙げられる。また、高校時代に比べて大学に通う強制力が格段と弱くなって自由を謳歌し過ぎ、本来の学業が継続できなくなるほど生活のリズムが狂う「生活リズム不安定型」も、除退の要因としてイメージされるものである。一方、大学における人間関係の構築につまずき、そのままフェード・アウトする「人間関係苦手型」もある。そして、学習する上でのハンデを持った学生が除退を余儀なくされる「福祉対応必要型」も初期型に分類される。

第2に、失速型は何らかのきっかけで突然学習意欲が喪失するもので、それは修得単位数やGPAが急速に低下することで顕在化する。それが「典型的失速型」である。この類型には先述の福祉対応必要型も含まれる。これは学習上のハンデがもとで専門教育についていくことがより困難になることが考えられ、こうした学習スキル面からの除退は留学生における「日本語能力不足型」にも現れる。一方、修得単位上もGPA上も申し分ないのに突然除退となる「隠れ不満型」は、所属大学の教育水準に不満を持つことから顕在化すると考えられる。

最後に、突発型は家庭の経済状況の急変から除退を余儀なくされるもので、「貧困型」がその典型である。新型コロナウィルス感染拡大の影響で経済的に困窮した世帯が増えて、このタイプの除退が増えたと思われがちだが、実際はそうなっていない。文科省の調査によると、2020年4~12月の間に国公私立四大、短大、高専で中途退学した学生は28,674人注2で、前年同時期(36,016人)と比べて7,342人減少した。一方、すべての中途退学者に占める経済的理由による中途退学の割合は2020年4~12月で19.3%、前年同時期比0.7ポイント増加した注3。割合は微増したが絶対数が減少したことに鑑みれば、上で指摘した大学独自のさまざまな学生支援策が一定の効果があったと見ていいだろう。


注1:2009年3月設立の大学・短大・専門学校の除退予防および防止に特化した非営利組織。除退の実態調査を行うとともに、それをもとにしたコンサルティングサービスおよび中途退学者支援事業を展開している(http://www.stoptheneet.jp/)。

注2:このうち、新型コロナウィルスの影響による中途退学だと判明している学生数は1,367人であった。

注3:ちなみに、同じ期間で学生生活不適応・修学意欲低下による中途退学者の割合は18.3%、前年同時期比0.7ポイント増加となった。この結果については今後の詳細な調査が必要と思われるが、キャンパスに通って学生生活を謳歌するのが当然だったこれまでのスタイルを一変させなければならない状況が2020年度にはあった。そのことが学生の心理面に無視できない影を落とすことになったのではないか。こうした面での学生支援策の構築も急がれる。