正式に職業に就くということは、本当に大変なことである。長くまじめに働いている方でも、会社の事情で退職を余儀なくされる世の中である。社会へ巣立つ準備段階でその厳しさを感じ取らせ、強い覚悟の必要性を教えておくことも重要なことであると思う。

私の担当した卒業生の中にも、せっかく正式に採用されたにもかかわらず、「先生、支配人が気に入らなくてさ、辞めちゃったよ」と言って、安易な態度で相談に訪れる子がいた。

「甘えるのもいいかげんにしろ」と、怒鳴りたくなる気持ちを抑えて、諄々と説いて聞かせるのだが、その子が本心から自分の短所を理解するのには、まだいくらかの年月がかかることだろう。

私自身も初めて学級担任を経験したころ、教室がごみで汚れている様を見て、先輩の先生から「何をやっているんだ。辞めてしまえ」と怒られたことがある。しかしそれは、世の中では当然のことである。その「当然の厳しさ」に対して、現代の中学生たちは、将来、耐えていくことができるだろうか。

その耐える力を身につけさせることもまた、学校と、家庭の責務であると思うのである。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『冬日可愛』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。