除退者の増加を食い止めるにはさまざまな方策が考えられる。たとえば、学生のクラブ・サークル加入率が低下傾向にある中年次演習に上回生が加わって一緒に学習する、学生スタッフをキャンパス各所に配置して、いつでも学生が集えるようなスペースを作るなどである。こうしたスペースで大学生活上のさまざまな悩みなどを共有できる関係性を構築すれば、大学に通う動機づけになるだろう。また、学生の学習面に関してはカリキュラムでの支援も可能である。

たとえば、初年次演習において大学で勉強するノウハウをトレーニングしたり、中等教育の内容をおさらいする補習的(リメディアル)科目の開講などである。視覚障害や聴覚障害、学習障害などハンデを持つ学生に対しては対応機器を教室内に整備するほか、専門スタッフを配置してきめ細やかな支援を行うことが考えられる。

そして、経済的理由で就学の継続が困難な学生に対するさまざまな奨学金の活用や、学納金の全額免除・分納などの支援制度の充実が考えられる。とりわけ、新型コロナウィルスの影響で経済的な不安を訴える学生が増加したことに鑑み、上記支援策とは別に大学独自の給付金を学生に支給したり、遠隔授業に対応するための情報端末などを無償で貸与する大学もあった。

しかし、前章でも指摘したが、どんなカリキュラムシステムやイベントなどの仕掛けを導入しても、そこから抜け落ちる学生は必ず存在する。だから、こうした制度面の充実と同時に、抜け落ちる可能性のある学生を早期に発見して必要な対策を講じることがより重要となる。そこで、本章では除退の可能性のある学生を早期発見する指標について、導入講義のデータを使って検証する。