ユダヤ人はもっと厳しい毎日を送っています。

長年、帰るべき国がない状態で国際政治に翻弄された結果、不断にアイデンティティ・クライシスと直面してきました。これが、揺るぎないもの・変わらないものに執着する気質を生み、結果的に金融に活路を見出しました。

ニューヨークやロンドン、デュッセルドルフなど、世界の主要都市の郊外の環境の良い住宅地には、必ずと言って良い位ユダヤ人と日本人が共存しています。本物を見極める眼を持った民族が辿り着く住まいなのです。ただ、注意を要するのは、日本人の規律正しい民族性が裏目に出る事態がありうるという点です。

日本人は悪い環境の下でも成果を上げます。時間が無くても、場所が狭くても、予算が厳しくても、何とか解決してしまいます。この達成感に酔うのです。しかし、ここに落とし穴があります。

「どういう価値を創造するためにやるのか」という基本的な問いが欠落すると、良からぬ目的を達成する最も廉価で効率の良い労働力に堕してしまうのです。今の日本に一番求められるのは、基本的な問いを発する勇気を持つことです。

知らないこと・できないことは、恥ずべきことではありません。「何が問題なのか」を正しく設定できないと、効果のある解決策には辿り着けません。根源的な問いを発する能力を開発し、磨きましょう。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『未来を拓く洞察力 真に自立した現代人になるために』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。