一書によると九字は太古高貴な神々が人に漏らされたるもので──(中略)神変不可思議の妙験あるものと伝えられているものである。──(中略)霊符の開眼法などに用いてその霊応を得ることができるのである。

此の一書を手にしたのはずっとのちである。友常貴仁氏が世に出された『聖徳太子の「日本が沈む日」秘書未来記の真相』には九字が詳しく書かれている。私が習った九字は口伝である。友常氏が書かれたことで気づかされた私の大変な失態を書かねばならない。友常氏の文章を引用させていただく。

『結んだ九字は、物事が解決したあとに必ず解かなくてはなりません。ここのところを蔑ろにしては大変です。忍者の真似事をしたり似非行者の切った九字がそのままになっていたりと、そこらじゅうが九字の結界だらけで、私には困ることがしばしばです。九字は物凄い威力があることは確かなのですが、切ったあと必ず解いておいてください。』

此のあと九字の結界を解く真言が書かれているのであるが、私はこのことをすっかり失念していた。教わった当時のノートを開けてみても書いてはいない。口伝であるから教わったあとこっそりノートに書き留める。

今となっては教わったのか書き留めるのを忘れたのかすら定かではない。書き忘れたことを願わずにはいられない。友常氏の『日本が沈む日』はあとでもう一度引用させていただくことになると思うが、私が生きている内に『未来記』が読めるとは思っていなかった。

このような家、このような仁を日本に残していてくれたことを神に感謝します。入信し、伝法会初回生を受講し、占星術を楽しんでいた頃、安い建売住宅を購入し一人目の子供を授かり、まだハイハイが始まったばかりのときに、家計がピンチになってしまった。

安い家とはいえ庶民には高い買い物である。私と家内の蓄えを頭金にし、数か月分の生活費を残しておいた。一日いくらの日当ではなく、家一軒仕上げていくらの手間受けで仕事を行っていた。

貰ってくる給金の倍の金額が出ていく月が何か月か続いた。手間受け仕事であるから多く働けば収入は多くなる。そうすると上乗せして出て行くのである。頑張れば頑張るほど支出が多くなるばかりである。

毎月、月初めに自分の運勢を見るようにしていた。今月はどう、と家内に聞かれるのが常になっていた。何ヶ月か続いたとき家内から、もう下ろすお金は無い、定期預金も崩してしまった、と言うので、無くなってしまったのならそれでいい、もう出ることもないだろうと言うと念の為今月も観て、と言うので占ってみると、今度は借金すると出た。私は家内に向かって、

「おい、えらいこっちゃ、借金すると出とるで、子供にヒモジイ思いさせてはいかんけど儂らは水飲むだけででも辛抱してくれよ。雨露凌げる家が残ればよしとしよう。」

そう告げると、わかったと了解してくれた。

阿含宗管長がローマ法王と会見し、隋行の信徒が謁見できる日程が発表された。

旅費が五十万雑費が五十万、百万円必要だろうなと思ったが、手元には全くなかった。

預貯金がなくなっただけで食べるに困った訳ではない、私も家内も周囲に生活が苦しいとは言ったり漏らしたりはしていない。

月の半ば頃から、父から突然お金を送って来たり、親方が田舎に引き上げるからと置いて行ったり、誰に頼んだ訳でもないのに返さなくてもいいというお金が二百万寄せられた。家内に借金するつもりはないのに借金が向こうからやってきた。此の金は全部散らして、「手元には残さないよ」と言うと「お父さんがいいと思うようにすればいいよ」と言った。手元には一切残さず散らしてしまった。ローマ行も断念した。此の頃お不動さんに阿含宗で勉強さしてもらっていますと話した。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『市井の片隅で』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。