骨はすごい

骨というと、単なる支柱と考えがちですが、実はすごい機能を持っているのです。骨の内部は海綿質となっていて、重さを軽くしています。その全重量は、七キログラムくらいにしかすぎません。

骨には骨芽細胞と破骨細胞があります。前者は骨を生成するプラスの役割を、後者は骨を吸収破壊するマイナスの作用をしています。小児期にはプラスが優位で身長が伸びます。成人期には両者のバランスが維持されますが、高齢期にはマイナスの作用が勝って脆弱となり、時には骨粗鬆症として転倒、骨折の原因になります。骨全体で見ると、年に十パーセントが入れ替わっているといわれます。

また骨粗鬆症の頻度は、女性が男性の三倍にも達します。女は男よりも長生きはするが、運動器の老化は早いのです。

私の幼年学校時代からの友人で、私同様に背丈の低い人がいました。終戦後、吉祥寺の駅でばったり会いましたが、顔は昔と同じながら背丈は百八十センチ近くになっていて驚きました。わずか二、三年で、こんなにも身長が伸びるものがいるのです。

八十歳を超えてから認知症となり、あるとき強い腰痛を訴え、加療後に老人ホームに入りました。面会に行ったところ、腰部で直角に曲がった姿で杖をついて出て来たのにはまた驚きました。腰椎に圧迫骨折を起こしたのです。十歳代には骨芽細胞が活発に働き、高齢期には破骨細胞が活動したものと思います。

骨というものは、このように常に激しい代謝を営んでいます。単に骨だけでなく、体内のカルシウムとリンの調節もしています。血中のカルシウム値が低くなると、骨から動員されて血中値を正常にする働きをします。副甲状腺ホルモンがこれに関与しています。カルシウムイオンは、筋肉の収縮に必須で、非常に重要な役割を担っています。

さらにまた骨の中には骨髄という造血組織があります。血中の赤血球、白血球など、すべての血中細胞がここで生成されるのです。小児期から成人にかけては、赤色になっています。血液疾患では、この骨の中の骨髄を穿刺し、造血状況を見るのが重要な検査となっています。高齢期になると造血機能が衰え、骨髄は黄色になります。病気がなくても老人性貧血があるのです。

私たちは、動物の骨は食べません。しかし犬は骨が大好物です。犬と限らず多くの動物にとっては、死んだ動物の骨が奪い合いとなっています。それだけなまの骨は栄養価が高いのです。