堀内は早速宇宙船の基本設計に入った。

地球から建造に必要な基本機材をシャトル機で運び込み、外部部材は月で調達する方式を作った。巨大宇宙船を建造するのにすべての資材を地球から運ぶには大変な歳月と費用が掛かってしまう。しかも生命が何千年も生存できるだけの自然循環型のキャパシティーが必要となる。

そして何千年何万年も飛行するには、燃料は半減期16万年のトリウム232を使うしかない。そのトリウム232に中性子を吸収させウラン233の核燃料によって発電する。その電気を用いて水素と酸素を作り出しウラシマの燃料とする。

居住区域の維持はできる限り自然循環型としなくてはモーターなどでは補修がきかなくなってしまう。強力な推進エンジンだけは機械式にして、居住用環境維持には機械式を排除する必要がある。

ウラシマの居住空間の円形ドームは強力な磁石による磁気浮上式、遠心力を付ける回転はドーム内気流を利用して、モーターがなくても上部から下部に流れる空気の流れで回転して遠心力を生み出し、無重力からの解放を作り出す。

気流循環型の大きさのドームとなると居住空間だけで1キロメートルほどは必要となる。ウランの貯水槽から出る熱水が居住ドームの上部のラジエーターから居住空間の空気を温める。そして居住ドームの下部にある船外で冷やした冷気による冷却ラジエーターでその空気が冷やされることにより、暖かい空気が斜めに設置された回転盤に沿って上から下に下ることにより、ドームが回転する仕掛けである。

まるで、ハムスターの回転車輪のようにドームを回し、ドーム内の気流がハムスターの役割を果たす仕組みである。この回転で遠心力が生まれ、ドーム内の物体はドームの壁に固定され、船内に安定した状況が生まれることになる。

堀内はこんな巨大な宇宙船をどのように作るか悩んでいた。

従来の宇宙船を作るように、地球で宇宙船のパーツを作ってそれをロケットやシャトルで運び宇宙で人の手で組み立てる方式では、膨大な費用と時間がかかってしまうし、4千メートルもある宇宙船を作ることなどとてもできない、どうしたらいいのかと行き詰まっていた。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『U リターン 【文庫改訂版】』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。