中心視野と周辺視野

ここで、視野ということを考えてみます。視野には中心視野と周辺視野とがあります。中心視野は、視野の中心から約2度という狭い範囲の領域で、網膜上で中心窩という、視細胞の中の錐体細胞の最も密な部分に対応しています。中心視野で対象をとらえることで、高い解像度で対象を認識できます。

私達はふだん、詳細な視覚情報を得るために、常に対象を中心視野でとらえようとしています。ちなみに、中心視ではっきりと見るには、はじめに視線を合わせてから、そのあとでピント(焦点)合わせが必要です(図1)

[図1]

次に周辺視野についてですが、周辺視野は中心視野よりも外側の領域で、ここでは対象を詳細にはとらえられません。周辺視野では、視野内のある部分に注意を集中することはできますが、ピントを合わせることはできません。周辺視野のうち、中心から20~30度くらいまでを、有効視野といって、とくに認知にかかわる領域と考えられています。

中心に近づくほど解像度は上がるとされていますが、それでも中心視と比べると、形態や色などはっきりとはとらえられず、ややぼやけた不鮮明な見え方となります。周囲のだいたいの状況をとらえるということになりますので、周辺視野では誤認が生じやすいと考えられます。周辺視野で人がいるかと思って、中心視野でとらえたら、壁にかけてある衣服だった、などのようなことです。

したがって周辺視野では、真にボトムアップ的な認識は困難で、不明瞭な部分を脳が補わなければならないので、基本的にトップダウン的な認識となります。思い込みも起きやすいでしょう。視点を動かさずに、周辺視野のある部分に注意を集中することはできますが、それでもはっきりとした認識は難しいと思います。

ただ、周辺視野の特徴として、動きに対する知覚は鋭敏であることがわかっています。また、輝度といって、光るようなものに対する感度はいいようです。例えば、夜空でやや暗く光る星や、夜間に道端で、月明かりなどでうっすらと見えているような白っぽいもの(石など)は、中心視野で見えていなくても、周辺視野では見えるということがあります。これは、桿体細胞の働きによるものです。

さらに、広い範囲にわたって見えるので、視野の全体像を把握することができ、視空間的な位置や配列などの情報はとらえやすいといえます。これらのことは、いかにも進化の過程において、敵を察知して逃げたり、獲物を追いかけたりするための重要な働きに関係しているように思います。