翌日から、私は何事もなかったかのように普通に夫に接しました。

そして、休日には極力一緒に何かをしたいと思い登山を提案しました。

これなら、もしかしたら一緒にこの先の話などをしながら仲良く山を歩けるかもと思ったのです。

そして、映画にも行きました。食事にも誘いました。思いつく限り、二人でできることはやりました。

でも……。

映画に行っても、帰り道で映画の感想を言い合うこともなく、ただ黙ってさっさと歩いて帰る夫。

食事も同様、自分だけさっさと食べ終え、スマホをいじる。

そこに会話はない。

最悪だったのが登山。

私の予想していた登山はハイキング。

二人で仲良くいろんな話をしながら山を歩く。

山を歩くことが目的なのではなく、その道中で会話をすることを期待していました。

だけど……。

まず、山を選ぶときに「高さがかなりあり、距離も割と遠く、駅(もしくは駐車場)から近く、途中に火を起こして食事をつくれる場所がある山」を私が選定。

もしそこに行く道中が渋滞でもしていようものなら、とたんに不機嫌。

駐車場が混んでいても不機嫌。

山が混んでいても、思ったよりも低くて登り甲斐がなくても不機嫌。

そして、途中で火を起こして肉や野菜を焼いて食べたいという彼のために、私は前日から食材の準備をし、水や燃料も準備、食後のコーヒーは豆から輓いたものでないとダメ。

そんな荷物の量は、私が考えていた数倍多いのです。

人が入るくらいのリュックを夫が背負い、私も大きめのリュック。

中には水や食料、鍋や洗剤、おまけに私が迷子になったときのために「トランシーバー」。

私の予想をはるかに超えた登山でした。

決して「楽しいハイキング」ではない。

ただの「苦行」です。

そしてもちろん、望んでいた楽しい会話は皆無。

ただ「山に登ること、そして山で肉を焼くこと」が目的になってしまいました。

彼の足の速さに合わせるのはとても無理でした。

彼は待ってはくれません。

まさかの「トランシーバー」を使う場面も出てきたのです。

山で迷子になる。

これは、本当に心細いです。

こんな、苦行のような登山を数回経験しましたが、一度も楽しいと思うことはありませんでした。

「こんなはずじゃなかった」

修復しようと試みた私の努力は、ものの見事に打ち砕かれました。

「やっぱりこの人とは無理だ」

そう思うまで、時間はかかりませんでした。

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※本記事は、2021年6月刊行の書籍『カサンドラ症候群からの脱却』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。