コロナ禍が世界的な混乱を引き起こし続けている2021年は、11月に国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が英国グラスゴーで開催され、そのCOP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論が行われます。

また、その会合に先立って、米国がバイデン新大統領に代わりパリ協定へ復帰を果たし、4月にはその米国が主催する気候変動に関する首脳会議(気候変動サミット)がオンラインで開催されました。世界の主要国の首脳40人によって、今世紀半ばの温暖化ガス排出量を実質ゼロにするために、その途中時点の2030年の目標をどう定め、いかに実現性を持たせるかという議論がなされました。

その場で打ち出された2030年の「削減目標」は、それぞれに積極的なものでした。日本政府も2030年度までの温室効果ガス排出量の削減目標をそれまでの26%から、一挙に46%まで積み増すと表明しました。さらに菅首相は、50%削減の高みに向けて挑戦すると力強く宣言しました(図表1参照)。

写真を拡大 [図表1]気候変動サミットでの主要国の削減目標

筆者は、この日本政府の46〜50%削減目標の発表を受けて、前述した「省エネルギー3.0」の必要性をより強く感じました。なぜなら、2030年までというのは、残された期間は9年足らずであり、この短期間にこの目標を達成するためには、まずは現在活用できる技術レベルを前提として、あらゆる手段を公共・民間を問わず国民が総動員する覚悟と具体的な実行が必要だからです。

やはり、そこではまずは省エネルギー・エネルギー効率化という基本に立ち返って、自らのダイエット・筋肉質化に励むことを最優先すべきではないでしょうか。

筆者の省エネルギー・エネルギー効率化分野における実務経験と知見から、この2030年目標の半分は、つまり23〜25%は、省エネルギー・エネルギー効率化で賄うべきではないかと考えます。また、最近の私自身のいろいろな営業現場を回った実感として、その削減ポテンシャルは、経営者のリーダーシップにより現場を鼓舞して進めれば、またユーティリティのアウトソーシングのような大胆な方策も活用すれば、十二分にあると確信します。

今日の日本産業・企業に求められているのは、脱炭素・カーボンニュートラル達成に向けた大胆な発想転換です。つまり、単なる脱炭素経営への方針転換という次元ではなく、過去の事業自体のあり方や進め方に拘ることなく、「脱炭素」という新たな価値を遡及するために、大胆な事業構造の変革も含めた企業体自体の変革が不可欠です。

その変革の基盤となる行動指針として「省エネルギー3.0」を位置づけてほしいと願っております。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。