カーライル城はイングランド、スコットランド国境西部の戦略上の要地で、エリザベス1世(在位1558年~1603年)に処刑された美貌のメアリー・スチュアート(スコットランド女王在位1542年~1567年)が一時軟禁されたり、ボニー・プリンス・チャーリーが(イングランドから見た)スコットランド反乱軍を率いて占領したりと色々面白い話があります。

メアリー・スチュアート(スコットランド女王)の話は皆さんご存知と思いますが、ボニー・プリンス・チャーリーはオレンジ公ウィリアム(イングランド王在位1689年~1702年)によってイングランドの王位を追われたジェームズ2世(1685年~1688年)の孫でフランスで亡命生活を送っていた(イングランド王であると共にスコットランド王でもあった)ステュアート朝直系の王子です。

ハノーヴァー朝のジョージ2世(在位1727年~1760年)が英語を解さず人望が無いのを見て1745年にスコットランドに上陸、イングランドに対する対抗意識に燃えるスコットランド人の熱狂的支持を集めてイングランドに向けて進軍しました。もう1つのケルト周縁であるスコットランドにおける最後の組織的反乱であり、これ以降はアイルランドとは違って独立することもIRA注1のようなテロもなく平穏です。

ただスコットランド、ウェールズに独立議会を設置する国民投票が昨年可決されたところで、今日のフィナンシャル・タイムズの記事によるとイングランドからの独立を指向する政党も支持を集めているようです。


注1:アイルランド共和軍(アイルランドきょうわぐん【英】Irish Republican Army、略称: IRA) とは、アイルランド独立闘争(対英テロ闘争)を行ってきたアイルランドの武装組織です。アイルランド共和国軍と表記されることもあります。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『ヨーロッパ歴史訪問記』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。