第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-3 技術と経済

2. 企業の技術開発

ここで経済学の基本的な考え方について述べておきます。マルクス経済学は生産過程に着目しています。商品の価値とは、その商品を製作するのに費やされた労働の量であると考えています。

製品の価値(交換価値)というのは、その製品の原材料を取得するのに費やされた労働量、部品を生産するのに費やされた労働量、生産設備を作るのに費やされた労働量、そして生産過程で労働者が費やした労働量など、すべての労働量の総和になります。

同量の労働量を含んだ商品が、同じ交換価値を持つことになります。その上で、資本家が労働者に支払う賃金とは何の価値なのかと考えました。

労働者が働いた労働量の分をすべて賃金として支払うと、収益が残りません。資本家が労働者に支払う賃金は労働した量を払うのではなく、「労働力」という商品に対する代金だと考えました。

労働者がその労働力を維持するために必要な生活費(これもいろいろな労働量が入った商品を購入する費用)の代金が、「労働力」という商品に対する支払いです。

労働者は、その「労働力」を維持するのに必要な労働量(生活費)を上回る労働を生産現場で行って商品に付加価値を与え、「付加した労働量 − 労働力」が収益になるという考え方です。

したがって、生産過程においてどのように価値が生み出されるかを中心に分析します。

一方、近代経済学は商品の流通過程に着目し、需要と供給の関係で価値が決まると考えています。すべて需要と供給の関係がどうなるか、どのようにつりあうかということが基本の考え方になっています。

需要と供給に与える影響因子として金融における利子や通貨の量、企業に対する減税や増税、公共投資などに着目し、ある時点での需要と供給のバランスを基本に考えています。

したがって、技術が生み出す新しい需要や生産過程に対する考察、つまり経済の発展(時間的変化)に対しては深い考察がなされていません。

こうしたなかで経済の発展を促す力は、技術の革新(イノベーション)にあると主張したのがシュンペーターでした。シュンペーターは、新しい商品や新しい生産方法、新しい販路の開拓、新しい供給源の開拓、新しい組織の実現などの「新結合」が経済の発展を促すと説明しました。

経済の発展を動的に捉え、経済発展を生み出す原動力が技術の革新やさまざま新しい組み合わせにあると主張しました。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。