「なでしこジャパン」の2024年W杯優勝を確信する

INAC神戸と日テレベレーザのプレースタイルは明らかに違う。だからこそ、なでしこリーグなど国内の試合で数多く覇権を争ってきたし、他チームの目標にもなってきた。この2チームの切磋琢磨が、日本女子サッカーのレベルを世界水準に持ち上げたのである。

INAC神戸は、優れた資質を持つ選手が創造性溢れるプレーを見せるチームだ。2011年W杯優勝時にキャプテンを務めた澤穂希が残した遺伝子は、FW岩渕とDF鮫島の中で脈打ち、次世代を担う1人であるMF中島、MF杉田に引き継がれている。

一方、日テレベレーザは、2015年W杯準優勝時にキャプテンを務めた宮間あやの後継者と目されるMF籾木結花を擁する、ある意味でなでしこサッカーの原型を作り上げ、発展させてきたチームである。

宮間は、W杯後に恩師本田監督に招かれて、岡山の湯郷ベルで主にプレーしたが、実は10代の頃日テレベレーザ下部組織に所属していた。しかし、千葉県の外房の実家から東京の多摩にある日テレベレーザで行われる練習に通うのは大変で、断念したという経緯がある。

思い起こせば、2011年W杯決勝のアメリカ戦後半、ゴール前のニアサイドに走り込む澤穂希に、宮間あやがピンポイントのコーナーキックを送り、あの伝説的な澤の右足アウトサイド同点ゴールは生まれた。INAC神戸のサッカーを作り上げた澤と、日テレベレーザのサッカーを身体に沁み込ませた宮間の、高い水準での状況判断の共有が生み出した素晴らしいゴールだった。

私は、ここに、日本が誇る2つの違う持ち味のチームの融合を見た。次のW杯に向けて、高倉監督がやらなければならない最大の仕事は、この2チームを世界一を狙える水準で融合させることである。映像でしか知らないが、高倉監督は極めて優れた指導者だという印書を受けた。

自ら日本代表選手として残した輝かしい戦績を基礎に、卓越した戦術眼と豊かな人間性を兼ね備え、選手の絶大な信頼を勝ち得ている。私は、高倉監督ならできると信じている。世界一に返り咲くための準備期間として、4年間は短いと感じる方が多いと思う。しかしそうではない。

実は、MF籾木を始め、今の若手なでしこの多くは、U─14、U─17、U─20の3世代の全てにおいて既に世界一になっている。彼女たちにとっては、世界一奪還は遠い目標ではなく、十分に実現可能で、かつ実現しなければならない通過点なのだ。奪還した後も、主力2チームの高い次元での融合が持続可能ならば、十分に連覇していける、高倉監督の手腕に、大いに期待したいところである。