学生・生徒は「笛吹けば踊る」のか?

使用データ

本章の目的は、導入講義をきっかけにして学生たちがどんなコース選択を行ったのかを調査し、その特徴を抽出することにある。ここでは、その前段階として行ったクラスター分析に使用したデータについて説明する。

サンプルは現在の形でデータを取り始めた2013~17年度の間に、私が担当した導入講義の受講登録者総数489名(2013年度は104〔うち女子学生14〕名、以下年度順に98〔同15〕名、98〔同12〕名、97〔同15〕名、92〔同13〕名)である。

導入講義の最終回に受講生に対して質問紙による調査を実施して、2種類のデータを集めた。

1つ目は『印象に残った教員ランキング調査』(以下、『ランキング調査』と略記)である。これは導入講義にゲストとして来た13名の専任教員の講義のうち、学生自身の印象に残った教員をランキング形式で表明してもらったものである。

この用紙はシートの体裁を採用している。ここでは、ランキングに載った教員の所属コース(A~D)に1~4の数字を割りあてた。なお、キャリア教育のゲスト講師を1位に選んだ学生には「その他」として5、この質問紙に未回答だった学生は0をそれぞれ割りあてた。

2つ目は『希望調査』である。先述の通りこれは第6希望まで記入でき、それを先と同様の方法で1~4の数字を割りあてた。また、この質問紙に未回答だったサンプルも該当データを0にした。最終的に学生がどの基本演習および専門演習に所属したかについては、各演習の受講者名簿をもとにデータ化した。ただし、専門演習に関して本学では先述の通り他学部開講のものも応募・履修できるので、該当学生については5を割りあてた。そして、演習に所属しなかった学生には0を割りあてた。最後に、学生の当該講義の成績(D~S)を0~4の数字に割りあてた。

クラスター分析の結果

クラスター分析には座標間の距離の定義やクラスターのまとめ方にさまざまな方法があるが、本章ではward法にしたがって分析を行った1。図表1にはクラスター分析の結果をデンドログラム(樹形図)として描いており、ここでは全489名の学生が6つのクラスターにまとめられた状態から出発して、どのように1つに集約されるのかが示されている。

写真を拡大 [図表1] デンドログラム

この図において、G1~G6がクラスター名で便宜上つけられたもの、その下にあるnがそのクラスターに該当する学生数をそれぞれ表している。そして、この図を見ると、G1~G5を1まとめにしたクラスターとG6を統合する際の線分が他に比べてかなり長い。これは2つのクラスター間の距離が一番遠いことを意味する。したがって、全489名の学生は2つのクラスター、すなわち【G1-G5】と【G6】に分類できることが分かる。以下、前者を第1クラスター、後者を第2クラスターとそれぞれよぶことにする。


注1▶クラスター分析の基本については次の文献が平易で分かりやすい。佐藤義治『多変量データの分類-判別分析・クラスター分析-』朝倉書店、2009年。また、本章は統計ソフトstataを使って分析を行ったが、その手法については次の文献が詳しい。石黒格(編)『(改訂)Stataによる社会調査データの分析』北大路書房、2014年。