12月

とどろく雨の音の中、自転車なら五分で済む距離ではあるけれど、ドラッグストアに行きたいと言いだした。でも今日は、自転車では無理だし、傘を差した徒歩では、往復で三十分はかかるだろう。

「危ないから、今日はやめておきなよ」

「でも先生、今整理しておけば、テスト明けがスムーズじゃないですか」

末広さんは、決意するとなかなか引かない。

雨の音は、部室の外でリズミカルに響く。ずたたた、ずたたた、ずたたた。

隣接するトレーニングルームからは、部員たちが取り組んでいるマシンの金属音も断続的に聞こえてくる。

生徒に言うわけにもいかないことだけれど、今日、作成した試験問題に先輩の先生からOKをもらった。印刷などの機械的な作業は残っているけれど、何だかやるべきことのほとんどの整理がついたようで、気持ちが楽になった。

「サクラコちゃんの几帳面さはいいことだけど、こんな日に無理しなくてもいいんじゃない? 私から言わせてもらえば、きみたちがびしょぬれになって駅に向かうだけだって、何だか気が重いよ」

雨音は一向に衰えない。ずたたた、ずたたた。

新人戦へのエントリーは見送った。いくらなんでも、入部してわずかな期間しか練習していないメンバーを抱えて十五人ジャスト。どんな相手との試合になっても、準備不足の状態で公式戦に臨むのは相手校にも失礼だろう。

部員たちにはそのまま告げた。そして彼らは、十分に準備して春の大会に備えるのだ、と、逆に結束を固めた。結構最後まで、自分は傍観者だという立場を確保しようとしていた岩佐くんまで、目つきが変わってきたように、思う。