宗教への誘い

仕事が忙しいとき、相手が暇なとき、ときどき応援に来てくれる男がいた。私より五つ年下で気が合う男である。熱心なエス学会の信者で、ことあるごとに誘い勧めるので、是がエス学会だといえるものを見せてほしいと言うと、一冊の本を渡され、この部分を読んでほしいと示されたのが、三澤(みさわ)(しょう)である。

わかりやすく解説してほしいというと宗教の話はしなくなった。

豊中市の作業場で仕事をしているとき、妙齢の婦人がやってきてエス学会の話を始め、しばし聞いたのち、作業があるのでと断ると、住まいを教えてくださいと言う。電車を乗り継がなければ来れないですよと、住所を教えた。

日曜日の昼過ぎ我が家にやってきた。来るとは思っていなかった私は熱心さに驚き、筋向いの姉を誘い話を聞くことになった。姉は宗教には全く興味を持たない人で、暫くするとアホラシという顔で帰ってしまった。話の内容は記憶に残らない程度のもので、私も切り上げることにした。

次の日曜日に、豊中の仏壇屋さんの地下階で青年部の催しがあり、若い人たちが歌ったり踊ったりで楽しい雰囲気の中に身を置くことができた。仏壇屋さんの家の仏壇の値段を言われたとき驚いた。小さな家が買えるではないか。また、すぐ近くの閉鎖中のボウリング場を買い取って会館を建てる計画をしていますと言う。エス学会の人たちは金持ちなんだなと思った。

仏壇の中を見て奇異な感じがした。子供の頃から見慣れた物とどこか違う。暫くして先祖代々の位牌がないと気づいた。気が付かないふりで質問はしなかったというより、気が弱かったというのが正しいかもしれない。

帰り際に次回は偉いさんが講義に来るので参加しませんかと誘われ、御経の解説か法話が聞けるだろうと参加を約束して帰った。