〈夫の外面〉

私たちは実家の隣に住んでおり、私の両親や兄弟とも顔を合わせることもありました。ご近所付き合いも、子ども関係の行事などで私たち夫婦の出番もあります。夫は、家以外では至極普通の、いわゆるマイホームパパに見えました。

もちろん私に大声で命令することも、子どもに怒鳴ることもなく、むしろ笑顔で行事には参加できるのです。しかも、外では妻のことも持ち上げ、良い夫も演じることができますし、家族に興味がないようなそぶりもありません。周りと話を合わせることもできるのです。

私の両親に対する態度も同様に、会えば会釈、話しかけられれば受け答えもし、兄弟たちにも返答はできました。ただ、夫の方から話を持ち掛けたり、何かやってあげようということはありませんでした。言われれば応える、言われればやる。

ですが、地域の掃除にも自ら出ることもないですし、そういう日には自分の趣味の予定を入れ、むしろ家にいないようにしていました。子どもの運動会や行事でさえ、自分の趣味の予定が先でしたから。私の記憶では、子どもの運動会に最後までキチンと参加したことなど、ほとんどないと思います。

最後までいれば逆に、ものすごく不機嫌になり、「つまらない1日だった」と吐き捨てるように言うのです。

もちろん、子どもの学校や塾の面談など、行ったこともありませんし、行きたいと言ったこともありません。仮に行ったとしても、普段の子どもの様子など気にしていないので、担任とまともに話などできるはずもないですが。

たぶん、帰ってから

「担任に○○の注意をされた。お前はどんな教育をしているんだ」

なんて言われるのがオチです。

こういう夫でしたし、私も夫婦の悩みを周囲にそれほど深刻に相談したこともなかったため、家族も友達もご近所さんも、夫の外の顔しか想像できませんので、ご近所からは「良いご主人ですね。優しい方ですね」などという評価をもらうこともしばしばありました。

そのとき私は、自分の我慢が足りない、もっとこの人を理解しなければと、自分を責めるのです。と同時に、私のこの気持ちを理解できる人など、どこにもいないという孤独感に襲われました。