フォールは、あまりのショックで口が利けませんでしたが、すぐに気を取り直し、言いました。「OK!! そのことは、考えてみます。でも、……あの存在は、誰なんです?」

「あの存在……お前はすごく気になるらしいね……」大天使は笑みを含んだ声で答えました。「あれはね、お前が自分でも気づいていない、意識的には認めてもいないが、力を引き出す、己の隠された知恵の部分なのだ。お前の中に原初からある本質であり、その言語は『愛』だ。

お前が持っている、もしくは持っていると思っている力は、『愛』から来る。『愛』からしか来ない。そのことを認識することだ。お前は愛の力を抱きしめることで、お前の中の本質的な『愛』の部分に繋がることで、女の子を、無垢の傷ついた自分自身を助けたのだ」大天使は、フォールがついてくるのを確かめ、続けました。

「どれも皆、フォール、お前自身の断片なのだよ。夢を見ているフォール、広い心を持ち、素朴で内的なフォール、道に迷い、濁った池で溺れていた無垢の女の子であるフォール、お前を包み、お前を傷つけ、お前の心を触手で包んでしまったあの濁った水、すなわち有害な感情も、皆お前なのだ。トラウマを引きずって、生きるエネルギーを失くしていたお前は、再び完全になるために、回復される必要があるのだよ」

大天使はやや間を置いて続けました。「だが、絶望することはない。最大の試練の時でも、必ず導きや助けがあるからね。心の広いホビットだけでなく、インナーガイダンス(内なる叡智)もそばにいて、じっと見守っていてくれたじゃないか」「あぁ、あの大きなガイドのことか……」とフォールはつぶやきました。

「そうだよ、フォール、本当に大きなガイドだ」大天使の言葉に、フォールは大きなため息をつきました。あまりのことに、一度で呑み込むことができませんでした。「ミカエルさま、仰ることが腑に落ちるまで、時間をください」

「そうだね。過去のトラウマの記憶を整理するのは大変な作業だ。一生かけても終わらない仕事だよ。だから、ゆっくりおやり、フォール」そう言って大天使は去っていきました。

※本記事は、2020年4月刊行の書籍『少年と天使たちⅢ 魂の回復と内省の旅』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。