GIとパンパンの情事

しばらくぶりで下校中に八重中学校の一年生に進学していた晴雄と出会った。ちょっと面白いものを見せてやるから付いてこないかと誘われて、Mは興味を覚えた。逞しく体が大きくなった晴雄に同行して今田の奥にある湖畔に行き、雑木林のなかに身を隠した。

M が話をしようとすると「黙って隠れて見てるんじゃ」と、たしなめられた。Mは見たことのない怪獣のように大きな山椒魚でも現れるのではないかと期待して待ち続けた。十分余りもすると駐留軍のジープが二台、勢い良く近くの道まで来て止まった。若いGI二人が派手な格好をした日本人の女二人と手を取り合い降り立ってきた。

草むらに駆け込むと互いに抱き合って性急に衣服を取り合った。二組の大きな毛むくじゃらの白人と日本の小柄な女が絡み合って、奇声をあげながら明るい陽差しのもとで、Mが見たこともない、あからさまな情事が始まった。

初めて見た男と女のシーン

Mは初めは女が外人のGIに苛いじめられていると思って、はらはらしながら見ていたが、激しく絡み合うショッキングな光景を息もつかさず呆気に取られて茫然と見やった。晴雄は、そっとMの手を引いて感づかれないように茂みのなかを後じさりした。

かなり昔のことだが、Mがまだ幼稚園の頃だった。野良犬の雄と雌がつがって離れないのを見て、バケツの水をかけて離したことがあった。人間も大人になると男と女が犬と同じようなことをするのかな? ということを絵や写真ではなく実物を初めて見て感じた。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『ピカ・ドン(原爆落下)とマリリン・モンローを見た少年M』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。