学生・生徒は「笛吹けば踊る」のか?

はじめに

紹介したシートを評価するツールであるルーブリックについて、その作成手順、運用上のコツ、運用で期待される効果などについて確認した。一度設定した評価軸および評価基準を厳格に運用し、それを受講生に返却することを怠らなければ、彼らは緊張感を持って受講を継続し、それを通じて受講生の学ぶ意欲などの様子がより明瞭に観察できることを指摘した。

ところで、近年ではAL実践の一環として、学生たちを学外に連れ出す数々のプログラムが稼働している。その代表格が海外留学だろう。チラシやメールなどで告知し、説明会を開催し、募集・選抜活動を行い、場合によっては事前研修を行ってようやく出発に至る。帰国後もプログラムによっては成果報告会が開催される。学内で企画されるインターンシップも似たような進行だろう。

しかし、こうしたプログラムを担当した教職員からは、《募集してもなかなか学生が集まらない》《選抜した学生の意識が低い》《学生が指示されないと動かない》といった不満の声がよく聞かれる。だが、私が気になることは、学外に飛び出した学生たちが学内に戻ってからどう行動しているのかである。

学内の講義・演習にせよ、学外プログラムにせよ、認知プロセスの外化を伴わなければALとは言わない。外化を通じて教員が意図したスキルは得られるだろうが、それはその後の生活に活かすからこそのスキルであって、本当にそのALが当初の成果を出せたかどうかはその後の動きを調べなければならない。

そこで、ここからはある講義を起点として学生たちがどう動いたのかを追跡した調査について報告する。その対象として導入講義の受講生を取り上げる。この講義は本学部のカリキュラム体系の鍵になる科目である。

説明したように、本学部は2011年度からコース制が導入され、自分の所属コースを意識した履修を推奨している。その目玉が「コース演習」(以下、基本演習と略記)である。これは2回生秋学期に開講され、3・4回生で連続履修する「演習Ⅲ・Ⅳ」(以下、専門演習と略記)へと接続する導入的演習科目である。

導入講義は、学生たちの希望する基本演習を選択させるのに必要な情報を提供するための科目である。つまり、この講義の首尾は、その後、学生たちが本学部の狙い通りに基本演習や専門演習を選択したかどうかにかかっている。しかし、これまで導入講義を通じて学生たちがどんな基本演習・専門演習を選択したのか、その実態を調査することはなかった。

ここからは、この点についてクラスター分析を用いながら検討する。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。