第一章 社会は変わる、変わるから新しい時代となる

いま続いている時代は何年もつか?

日本では時代の続く期間を表現する場合、「十年一昔」という言葉を使います。これは時代が十年位で変わることを目安とした言葉です。

確かに時代が続く期間を一年や三年程度の短期間にすると、日々の生活に追われている庶民は前の時代と今の時代の判別が難しくなります。

その点、時代の区分を十年位にすると、周りの環境が変わり社会の変化が具体的に見えるようになり、人は変化が頭に入りやすくなるものです。

時代が何年続くかは、確かに難しい判断になりますが、私の経験から時代は十年を一つのメドにして場合によれば三十年程度、続くと踏んでいます。

時代の十年説は、昔の人達が言った説ですが、私が三十年と長期間見積もったのは、私の経験にプラスしてニュートンの「慣性の法則」を応用した結果のものです。

慣性の法則とは、「静止、または等速直線運動をする物体は外部からの圧力を受けない限り、その状態を変えない」とする説です。

慣性の法則を時代との関係を例を挙げて説明しますと、人々は大きなプロジェクトを目標にして、一旦ことを進める場合、計画の頓挫は難しくなり、計画が大きければ大きいほど計画の中止が難しくなるものです。

多くの人たちの合意と協力で進めるプロジェクトを些細なことで頓挫することは、皆が許さない心境になるものです。

私は不動産鑑定士業を三十五年間続けることができましたが、三十五年間の内実を説明しますと、開業の当初の頃の日本経済は高度成長を続け、全国的に不動産価格が高騰していました。

だが、開業して十年後の昭和六十三年に高度成長を続けた日本経済が戦後最大のバブル崩壊に見舞われました。

バブル崩壊を契機に、不動産ブームにも陰りが見え、まず東京を始めに大阪、名古屋と大都市で地価の下落が始まりましたが、地方の地価の上昇はまだ続いていました。

バブル崩壊に見舞われた七年後の平成七年頃からようやく地価の下落が始まりましたが、それでも下落率は〇.一~〇.五%と鈍いもので、地方は地価下落の実感が乏しいものでした。

だが、平成十七年頃になると地方の土地価格は一斉に大幅な下落に転じ、不動産の投資ブームもようやく終わり、地方の時代は終わり、今の日本は東京一極集中に舵を切っています。

ところが、私は高速自動車道等の大型案件の鑑定もあったことから仕事がまだ続いており、不動産鑑定士を廃業したのは平成二十五年です。結果的に私は、三十五年間も鑑定士業を続けることができました。

不動産投資は金額が大きくなるものです。公共事業は、予算も五年、十年先を見込んで設定され、対象とする範囲が広く、関係者も多岐にわたります。また個人でも不動産の取得は金額が張り、一生を賭けて取り組むことになります。

不動産には、ニュートンが唱える「慣性の法則」が強く作用する条件が揃っていました。時代は長短色々な波があるものですが、時代を長く見積もっても三十年が一つのメドになるとするのは、私の体験から得たものです。

私は時代が継続する期間は十年をメドに二十年、長く見積もって三十年程度と踏んでいますが、最近の傾向は技術が時代や社会を先導する傾向が強くなっています。世界はIT(情報技術)時代に突入し、さらにAI(人工知能)の登場もあり、最近は総じて時代の間隔が短くなっています。

短くなった時代。だが日本人の平均寿命は延び、私達は人生一〇〇年時代を迎えるとも言われています。

長くなる人生、逆にスピードを伴う技術革新。私達はこのギャップに振り回され右往左往する人生ではなんのための人生か、訝る気になるものです。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『特性を活かして生きる』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。