二階には、木の色をした四人掛けのテーブルが、十組整列していた。二階の方が少し薄暗くて、天井からさがるオレンジ色のライトが可愛かった。二階の隅に、おいやられたように望風の好きなテーブルは置かれている。そのテーブルを隠すように、ピアノ、ドラム、ギター、器材、マイクスタンド、ウォーターサーバーなどが何気なく並んでいる。気取るわけでもなく、アピールするわけでもなく、ただ並んでいた。

何種類ものギターやアンプやスピーカーも、すごくなんとなく、何気なく……。昔、誰かの夢がつまっていたのかな、そんな懐かしいような、切ないような、そんな空気感がある。望風は、その歴史も担ぎたかった。誰かの想いがつまっているかもしれないと思うと、愛おしくてたまらなかった。望風は、他人の想いも自分のパワーにしていた。

あなたに会う資格        詩 武士      曲 望風

ただじゃれあっていれば毎日笑っていられて

ただなんのしがらみもなくあなたに会えた

僕がもっと大人だったなら

あなたを手放さずにすんだのに

僕がもっと大人だったなら

あなたを泣かさずにすんだのに

もう一度あなたの笑顔がみたくて喜ばせようと背伸びする

現実を知れば知るほど遠ざかるあなたの声さえ思い出せない

僕を見つめる眼差しが

求められる答えが

僕には重すぎた

僕がうばってしまったんだ

あなたの笑顔を

僕がうばってしまったんだ

あなたの優しさを

僕はもうあなたに会う資格なんてないんだ

その資格を手に入れるのに

どれだけの時間を費やすのだろう

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『KANAU―叶う―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。