除草剤は有効成分の物理化学的特性や除草効果などを考慮して、粒状の粒剤、粉末状の水和剤、液体状の乳剤やフロアブル剤と呼ばれる剤型に製剤されます。また、有効成分だけが散布されることは稀で、ほとんどの製剤には増量剤や界面活性剤などが添加されています。農薬を散布した後に植物の葉が白くなることがありますが、これは農薬の有効成分ではなく、増量剤として加えたベントナイトやタルクなどの粘土鉱物が葉の表面に残ったものです。

水田用除草剤を例にとると、1950年代から2980年代には、粒剤が主流で、10アール当たりの散布量(有効成分ではなく製品として)は3キログラムでした。水田における粒剤散布はぬかるんだ田んぼの中を歩きまわらなければならず大変な重労働したが、現在は水田の中に入らず畦畔から簡単に散布できるフロアブル剤と呼ばれる液状の製剤やパック状の製剤が主流となっており、散布量も500グラムほどに低減されました。

次は植物成長調整剤(PGRs:Plant Growth Regulators)です。リンゴやミカンなどの果樹栽培では、かつては摘果あるいは摘花と呼ばれる間引きが人の手で行われていましたが、今は植物成長調整剤に代替されるようになりました。果樹の摘果や摘花の他にも、植物成長調整剤はトマト栽培において果実の着果促進、肥大成長、熟期促進などに使われており、今や施設園芸ではなくてはならない農業資材の一つになっています。そして誰もが知っている種無しブドウは植物ホルモンのジベレリンによって誘導された単為結果によるものです。

ジベレリンは台湾農事試験場の黒沢栄一技師によって1926年にイネ馬鹿苗病の原因毒素として世界で初めて発見され、その後、東京帝国大学の薮田貞治郎、住木諭介の両博士によって単離同定された植物ホルモンです。ジベレリンを積極的に活用した技術が種無しブドウですが、ジベレリンの作用を逆に利用した資材もあります。ジベレリンが植物体内で合成されなくなるか合成されても分解されてしまえば、植物の伸長成長は停止してしまいます。このような作用を示す植物成長調整剤を生育抑制剤と呼んでいます。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。