雑草管理に関連するさまざまな事柄について

2.雑草の制御方法

また、除草剤と殺菌・殺虫剤では起源も異なります。硫黄は紀元前1000年頃から燻蒸剤や殺菌剤として使われていました。石灰硫黄合剤、硫酸銅、水銀も19世紀初頭から果樹類のうどん粉病、ジャガイモ疫病、種子殺菌用として農業場面で広く使われていました。硫酸銅と石灰の混合剤のボルドー液は1882年にフランスでブドウのうどん粉病用に作られた殺菌剤ですが、現在でもキュウリベト病やイネイモチ病などに使われています。このように、殺菌剤はもともと鉱物(無機物)でした。

殺虫剤はどうでしょうか。ナス科のタバコ、キク科の除虫菊、マメ科のデリスには、それぞれ殺虫成分のニコチン、ピレスロイド、ロテノンが含まれており、これらの植物は古くから殺虫剤として利用されていました。植物の中には動物の食害から身を守るための自己防御物質を生産するものがあり、人がこれを殺虫剤として利用していました。つまり殺虫剤の起源は植物ということになります。

ところが除草剤には起源などというものがありません。塩が除草資材として検討されたことがあったようですが、高価であったことと土壌を劣化させることから普及しませんでした。農耕が始まったとされる1万年前からつい最近まで、家畜による除草か人力による手取り除草だけに頼っていたといえます。有機合成除草剤が開発されたのはわずか70年ほど前のことです。1944年に2,4-Dが開発されるまで、もっぱらテデトール(手で取るのダジャレです)で対応していました。この点も除草剤と殺菌殺虫剤の大きな違いといえます。

ちなみに虫を殺すから殺虫剤、菌を殺すから殺菌剤ですが、なぜ草を殺すのに殺草剤としなかったのでしょうか。真意のほどは定かでありませんが、すでに野ネズミを殺すための殺鼠さっそ剤という農薬の区分があり、殺鼠剤と殺草剤は音の響きが似て混同しやすいことから、両者をはっきり区別するために殺草剤ではなく除草剤と名付けられたという説があります。

一方、農薬には病害虫や雑草に効果を示すだけでなく、その効果が広大な農地で均一にしかも持続的に効くことが求められます。私たちが粉末やカプセル状の風邪薬を飲むように、農薬にもさまざまな製剤型があります。最近、開発された除草剤の中には10アール(1000平方メートル)当たりの有効成分量が数グラムと非常に高活性なものがあり、少量の有効成分を広い圃場全体に均一に散布する必要があり、これを可能にしているのが散布技術と製剤技術です。