これに加えて、シート作成に対する基本姿勢を確認する目的で、

④漢字・文法等が正しく使いこなせているか?

⑤ていねいなシート作成を意識しているか?

も目標リストに加えた。④は文字を使って意思疎通を行う上での基本スキルであるし、⑤については読み手を意識して書いているかどうかをある程度判断できる項目である。なお、事前講義については、提示されたデータを加工しグラフ作成する作業も伴うため、

⑥指示された計算を手際よくかつ正確にできているか?

⑦グラフを明瞭かつていねいに作成できているか?

も目標リストに加えた。以上の学習目標リストをもとに、第3段階に準じて上記番号順に、①要約、②感度、③想像力、④日本語、⑤体裁、という見出しで評価軸にした。※注2)。これに配点を加味して完成したのが、図表2のルーブリックである。

[図表2]ルーブリックサンプル(その1)

これを見ると、たとえば、①要約については「手際よくまとめる」ことを基準に3段階に評価を区分し、最もいいものに2点、悪いものに0点、その中間を1点と点数配分している。この点数配分が5つの評価軸すべてにわたって網羅されているから、一番よく書かれたシートには10点が与えられる構造になっている※注3)。

①~③についての実際の評価は記述内容を最も重視しているが、とりわけ①については、少々ポイントがずれていてもたくさんの文章が書かれていたら高い評価をするという運用をしている。これが前章の作成例でたくさん文章が書かれていた要因の1つである。なお、継続的にたくさんの文章が書けるようになったら、今度は文章量を削ってエッセンスを抽出させるように個別に指導している。

図表2はSGHおよび導入講義で使用されたが、事前講義は先述の通り作業を伴う事情から、上記リストから少し改変・集約した。それが表2-3で、①計算、②作図、③要約、④感度、⑤メモ、⑥漢字・文法、という見出しで評価軸とした。

これを見ると、たとえば①計算については半分以上正解していることをボーダーにして全問正解4点、半分以上不正解を1点、その中間に正解割合に応じて2~3点と点数配分している。こうして6つの評価軸すべてに評価基準を定め、一番よく書かれた表シートには24点が与えられる構造となっている。

※注1)近年では2か月弱で15回講義を行うクォーター制という開講区分も出てきている。

※注2)導入講義に関しては、講義3回につき1回のペースでレポートも提出させている。その文量は原稿用紙換算10枚程度と多めに設定しているが、手書き444での作成を義務づけている。この理由は日本語を操る能力を鍛えるためと、レポート作成のていねいさを観察するためである。もちろん、これについてもルーブリック評価で採点している。紙幅の都合で本章での掲載は省略するが、5つの評価軸(要約・比較考察・参考文献・日本語・体裁)を設定し、4・2・0の点数配分によって20点満点にしている。

※注3)この形式を説明式ルーブリックという。もう1つ代表的なものが、評価軸に対してどの程度到達できたかを印だけをつけるスタイルのチェック式ルーブリックもある。Suskie, L.,“Assessing Student Learning:a common sense guide(2nd Ed)”John Wiley&Sons, Inc, 2009.(齋藤聖子(訳)『学生の学びを測る─アセスメント・ガイドブック─』玉川大学出版部、2015年)。別なルーブリック形式として、各評価軸に対して最高点を与える基準のみを書き、それ以外はそうなった理由についてコメントと点数を書き込むものもある(スティーブンス・レヴィ(佐藤ほか)、前掲書)。この形式だと最良の基準(および最高得点)だけを考えればよく、ルーブリック作成自体は楽である。しかし、それ以外はすべて手書きで理由を書き込まなければならないという点で採点業務は煩雑になる。とはいえ、中間に位置する基準は(実際は広くても)曖昧な表現にならざるを得ないが、どこが課題なのかを各受講生に具体的に明示できる点では有用とも言える。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。