上の説明では高等教育における3つのポリシーのうちCPを最初に確定させ、そこからの派生でAPおよびDPが策定されると述べてきた。だが、実際の策定過程はそうなっていない。

たとえば、吉村宰がまとめているように、3つのポリシーはDP⇒CP⇒APの順番で策定すればいいとされる※注3)。大学創設にあたっては教育の目的や理念が明示されるのが普通である。いわゆる建学の精神である。DPは建学の精神を同時代において要請される人間像に投影する形で策定される。

これを実現するためにどんな教育課程が望ましいのか、その大方針を示すのがCPであり、それを通じて具体的なカリキュラム体系が構築される。その体系のもとでスムーズに学習するにはどんな学生が望まれるのか、その姿を示すのがAPだというものである。

吉村が検討した事例は新設学部における3つのポリシーについてであり、これについてはDP⇒CP⇒APという策定の流れは合理性がある。だが、創立からある程度時間の経過した既存学部において、この流れで各ポリシーを策定するのは極めて難しい。

建学の精神は創立時点の時代状況を反映したものであるが、それと今の状況は完全に一致するのか? 異なるならば、具体的にどの部分がどう変化したのか? 共通する部分があるとしたらそれはどこか? ここの認識が一致しなければ、実行可能なDPの策定はほぼ不可能である。

これを何の考慮もなく策定・実行すれば教育現場が大混乱に陥るか、美辞麗句を並べるか、このいずれかになるだろう。今後、高等教育に対する目がますます肥えてくる中にあって、内実の伴わない3つのポリシーは大学に対する不信感を抱かせ、結果として大学のブランド力低下につながる恐れがある。

その意味で、これまで説明したように、CPを核にした方がより実行可能な各ポリシーの策定ができるようになる。それを各講義の実践レベルに落とし込む際には、CPにもとづいて定めたDPとの整合性に配慮しながら授業デザインをすればいいし、それに沿った形でルーブリックを作成すればいい。

※注1)なお、最近ではAP、CPおよびDPの関連づけ、および大学における評価方針を学生などに周知するアセスメント・ポリシーも強調されている。

※注2)齋藤朗宏は、経済学部のある国公私立大学のAPの内容に関するテキストマイニングを行い、国立と公私立で入試段階において受験生に期待するスキルに質的差異があることを見出している。齋藤朗宏「各大学経済学部におけるアドミッション・ポリシーのテキストマイニングによる分析」『大学入試研究ジャーナル』第23号、2013年、pp.171-178。また、彼はテキストマイニングを利用してAP、CPおよびDPの関連性について検証している。その中で、CPとDPにおける内容の関連度が高い大学が多い反面、APとDPの関連度の高い大学がごく一部にとどまっていることを指摘している。齋藤朗宏「アドミッション・ポリシーとディプロマ・ポリシーの関連性に関する分析」『大学入試研究ジャーナル』第26号、2016年、pp.73-79。

※注3)吉村宰「アドミッション・ポリシーに基づく個別大学の入試設計のあり方について」『大学入試研究ジャーナル』第26号、2016年、pp.81-88

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。