各スタチン系薬の構造上の特徴

コレステロールは肝臓でアセチルCoAから二十数段階の反応を経て生合成されます。その律速段階酵素としてHMG-CoA還元酵素が知られ、スタチン系薬はその酵素を阻害します(図表1)。

[図表1]スタチン系薬の阻害部位

スタチンの構造にはHMG-CoA還元酵素の基質HMGCoAとその生成物メバロン酸の構造に類似する部分(3,5-ジヒドロキシヘプタン酸構造)があり(図41)、そこが酵素の活性化部位にはまり競合的な阻害作用を示すとされています[図41の○枠が類似構造:ただリポバスⓇは点線部分が開裂した活性代謝物(オープンアシド体)となってから同じ構造になります]。

では、これらの構造を比較して、クレストールⓇには他のスタチン系と違ってMgやAlと結合しやすそうな部位はあるでしょうか?一般に金属イオンの正電荷に対して非共有電子対のある原子(N、O、F等)が配位してキレート※注)を形成するといわれています。クレストールⓇの場合は窒素原子が近隣に3つ存在する部位(三角部分)があります。リピトールⓇにも2つの窒素原子と1つの酸素が近くにあり(四角部分)、添付文書に注意書きはないものの制酸剤と併用すると血中濃度が低下するという報告と一致するようです。

ニューキノロン系抗菌薬と金属では隣接する2つの酸素原子がキレートを形成して、吸収が悪くなるという説がありましたので、スタチン系でも同様の現象が起きている可能性があります。

まとめ

スタチン系の薬は脂質異常症の治療で最も利用されていると思います。それだけに他の薬との併用が多い薬にもなります。併用薬の多い患者さんは、飲み合わせがあるかを一度薬剤師に聞いてみるとよいかもしれません。

[図表2]スタチン系薬の構造式