「全編真面目・特に『真面目な話』」

そのウェイターのサービスするお料理で御座いますが、ひと昔前にはフランス料理系統のものが多く御座いましたが、最近はイタリア料理系統のものが多くなりました。

サービスされるお料理の個々のプレートも大きく重い物にもなり、ウェイターはそれで腕っ節が強く成る事請合(うけあ)いで御座いますが、その皿にはメインでは牛フィレ肉の乗りましたプレートに、まるでアメリカ・ニューヨークの高名な画家の手に依る抽象画の輪郭のような縁取りが、(いろ)とりどりのソースで描かられておりまして、そして、添え物のクレソンとかが、緑の彩をアクセントとして添えられ、そのお料理もたいへん美しく盛り付けされておりました。

そして他の多彩でカラフルな楽しい感じのお料理は、と申しますとデザートで御座いましょう、チーズ仕立てバニラアイスクリームにはドライフルーツとナッツ類が色取り取りの宝石のように混ざっておりました。それが切り分けられ、各皿盛りにより、色彩の濃い、ラム酒のようなアルコール類の入ったソースが、また掛けられておりました。

その時には、つまりキリストの降誕祭前夜祭クリスマス・イブの、その往年の有名女性アイドル歌手のディナーショーでは、という事で御座いますが、そのようなものがご提供されておりました。

しかしながら、公式の国際会議のような時にはフランス料理と相場は決まっておりまして、テーブル・クロス等も白で統一されております。

オードブル(前菜)、比較的軽めの少し刺激的なもので冷えている、例えばそれで食欲が増進します、スモーク・サーモン(レモン汁・オリーブ油)、それなどが多かったでしょうか……からスタートいたしまして、魚〈舌平目のムニエル・バターで焼く〉などや巨大な海老(テルミドール)その後には、フィンガーボールで指先を洗い、そして、メインの牛肉料理〈グリル・網焼き〉など、それは昔にはプラッターという、大きな楕円形の料理を乗せる銀のお皿に、そのテーブルの人数分に切り分けられたメインであるその牛肉を、一つ一つ各テーブルの食器の皿に配る、その様なもので御座いましたが、今は切り分けられているものを皿盛りで皿ごと各(くば)る様になりました。

そしてデザート、アイスクリーム、コーヒー(デミタス・カップ)、まで10品(フルコース・正餐(せいさん))で、終わりと成るもので御座います。