知識を得るための読み方

知識やスキルを身に付けるための読み方です。自己啓発本やビジネス書、ハウツー本や実用書、新書や専門書などが、これに該当します。ノンフィクションやドキュメンタリーなんかも、ときどき読みますし、医学書や文献などもここに含まれます。

ストーリー性よりはリアリティがすべてなので、その本の”価値”は、情報の正確さや取材の緻密さや研究の妥当性や論の組み立て方にかかっています。単なる実用性だけでなく、職業人としての人生観やものの見方、メンタルケアや士気向上などに重点が置かれている本もありますから、知識だけでなく、生き方のヒントを得られます。

坂本龍一さんの『音楽は自由にする』や、山下康博さんの『指揮官の決断八甲田山死の雪中行軍に学ぶリーダーシップ』や、羽生善治さんの『決断力』、千住文子さんの『千住家にストラディヴァリウスが来た日』などが思い出されます。

質の高い説得力のある文章が、良し悪しの判断基準ですので、おのずと分析的、解析的な読み方になります。医学論文を読んでいた当時を思い出し、ときに眉間にしわを寄せながら読んでいることがありますが、多少苦しいこともあるけれど気持ちの高まる読書法です。

資料のための読み方

テーマに照準を合わせて資料として読む本です。そういう意味では、最近”文章の書き方”や”読書法”のようなタイトルの本をよく読んでいます。役割としては、書くことにつなげるための、より実践的な本です。アイデアの参考や文献としての引用に加え、表現を模倣したりロジックの基本にしたりするので、目的に応じてじっくり読むことになります。

依頼されて書く場合であろうが、自分で勝手に書く場合であろうが、書きたいテーマに合致した本をセレクトして読みます。当然、付箋やメモが増えます。

本書を書くにあたって参考になった本は―すなわち付箋のもっとも多く貼られた本は―、岸見一郎さんの『本をどう読むか幸せになる読書術』、若松英輔さんの『本を読めなくなった人のための読書論』、藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』、白取春彦さんの『「深読み」読書術人生の鉱ヒント脈は本の中にある』、森博嗣さんの『読書の価値』などでした。

資料として使えるかどうかが良し悪しの判断基準ですので、軽く読み飛ばすということにはなりません。実用書、もっというなら取扱説明書を読むように、膝を揃えて向き合います。「こんな考え方もあるのか、これをヒントに自分だったらこう展開するな」という気持ちになり、私にとってはワクワク感を持って読める読書法です。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『非読書家のための読書論』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。