三分、四分と時間は経過していく。福島の必死の励ましに、須藤はついに立ち上がった。

あの時、福島が須藤をどのように励ましたのか、私はあえて聞かなかった。おそらく福島に尋ねても、彼はこう答えただろう。「僕は、何もしていません」と。

しかし、須藤はその後、明らかに復活した。開き直ったかのように、強打の連続で、相手を圧倒し始めた。その試合は須藤・福島が勝利したが、第三試合のペアが惜敗し、結局は、その試合で福島たちは引退することになった。

しかし、翌年の同じ県民体育大会において、須藤は自分の学年の仲間たちを率いて、県大会優勝を果たしたのだ。須藤はその後、ソフトテニスで名高いA高校に進学し、国体の選手となり、大学選手権でも活躍した。

そして偶然だが、現在は私の住んでいる家のすぐ近くで暮らしている。しかし私は彼の存在の陰に福島という選手がいたことを決して忘れてはいない。

あの時の彼の、一心に励ます態度があったからこそ、須藤は、自分の学年のチームの前衛を育てることができたのだ。互いのミスを決して責めることなく、励まし合うことの大切さを、須藤も、そして私も、福島から学んだのだ。

N中学校の県大会優勝の陰には、その前年の、福島のあの姿があったことを、私は、決して忘れないだろう。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『冬日可愛』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。