代わって広く認められるようになったのが、老人性の弁膜疾患です。とくに多いのは大動脈弁狭窄です。左心室から全身に血液を駆出する際に、その出口の弁が狭くなって血流を阻害するという厄介な病気です。治療は人工弁置換手術で、高齢者ではリスクが大きいことが知られています。

ところが近年になって、カテーテルを使う方法が開発されました。経カテーテル大動脈弁留置術といわれるもので、その機器を使用すれば、八〇歳代でも十分効果があります。ここまで簡単にカテーテルで重篤な弁膜症が治療し得ることは、まさに驚きでした。

高齢者の心臓病を解説:心不全

心不全は、高齢者では非常に頻度が高いものです。成因が明らかなものがありますが、今まで元気で暮らしていたものが、急に息切れ、呼吸困難、むくみなどを起こし、それが反復して入退を繰り返すというのがよく見られる症状です。

血中のBNPという心臓ホルモンが高値を示します。心臓は、ポンプ機能を営む臓器です。拡張期と収縮期が交互に繰り返され、片時も休むことがありません。ポンプというと、血液を全身に送る駆出機能が大事と考えがちですが、実は拡張不全の方も非常に大きな意味があります。適切に拡張しないと、ポンプ機能不全になります。高齢者にはこの拡張不全による心不全が多いことが明らかになってきました。

八十年、九十年と拍動を続けていると、ポンプ機能は、若い人に比べて明らかに低下します。それが心筋肥大、虚血、ポンプを動かす電線の断裂、弁の劣化などの心臓病が常に起こる可能性があります。老いた心臓は若い人のそれとは違います。

心臓のエネルギーをATPというコインで作り出すミトコンドリアは、能率が低下し、活性酸素を産生して老化を促進します。症状がなく、自分の心臓に自信があると思っている人が、突如として息切れ、呼吸困難を起こし、心不全になることが少なくありません。心臓に自信がある高齢者はないといえましょう。アスリートは概して早死にです。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『健康長寿の道を歩んで』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。