学生・生徒に文章を書かせ続ける仕掛け~ルーブリック評価を中心に~

前章では、私が実際の講義・授業で使用しているシートの作成例から、記入した学生・生徒の「学ぶ姿勢は習慣づけられているか?」「モチベーションは維持できているか?」といった、定期試験や満足度調査などでの把握が難しい事項を読み取れる可能性について検討してきた。

大学のさまざまな講義・演習において、定期的にミニッツペーパーなどの文章を受講生に書かせる実践が増えてきた。その目的はさまざまだが、講義の終盤になるほど、受講生の書く文章量が目立って減る現象に遭遇した経験のある教員は意外と多いと思われる。

その要因の1つが学生の記述内容と成績が連動されていない、あるいは連動していてもそれが学生に周知されていないことである。

どれだけ記述しても、《書いても書かなくても成績評価は変わらない》と受講生に認知されてしまえば、一気に文章量が減るのは必然である。その意味で、「書く」活動が講義中に挿入されていても、それが内実の伴った上で持続できなければALとは言わないだろう。

近年、教育実践を支援するさまざまな手段が精力的に開発されているが、教育活動において書くことの重要性は昔も今も変わらない。理想は学生・生徒の興味を持続させるような授業設計をし、それに寄り添うように「書く」活動を挿入できることである。

だが、それを1つの講義ですべて完結させるのは極めて難しい。カリキュラムの設計段階において書くことを意識させる科目群を配置し、そこで得たスキルを活かすような(上位の)科目群を配置するなどの工夫が必要であろう。

とはいえ、大幅なカリキュラム改革が実現しにくければ各教員が個別に実践していくしかないが、それを持続させるためには(残念ながら)記述と成績を厳格に結びつけざるを得ない。ある程度の強制力がなければ、中堅私学に通うボリュームゾーンに「書く」活動の癖をつけることは難しい。

それを実践する手段の1つがルーブリック評価である。そこで本記事では、前回で紹介したシートを評価する際に私が使用したルーブリックについて、自身の経験を踏まえながら作成のコツや運用上の注意事項などについて整理したい※1

※1:本記事は、中村勝之「『インテグレーション科目』における「ルーブリック」評価を用いた講義実践報告」『教職課程年報』第12号、2017年、pp.57~62、をもとに大幅な加筆・訂正を行ったものである。また、田宮憲「ルーブリックの意義とその導入・活用」『高等教育開発センターフォーラム』第1号、2014年、pp.125~135、は私と同様、教育学者ではない者がルーブリックを作成・使用した実践報告である。