次に(こう)種的(しゅてき)な雑草の制御方法について説明します。耕種的な雑草管理とは、作物の作付方法、栽植密度、畝幅(うねはば)畝間(うねま)、湛水深などの作物の栽培方法を変えることによって、雑草の生育を制御することです。

日本には約六〇〇〇種の高等植物が生育していますが、水田にはわずか二〇〇種ほどの植物(雑草)しか生育していません。差し引き五七五〇種もの植物が水田に生育できないことになります。なぜ、水田に生える雑草の種類が限られているのでしょうか。その原因の一つにイネの根から出されるアレロパシーと呼ばれる他の植物の成長を阻害する(促進する場合もあります)多感作用物質が挙げられます。

また、毎年のように散布される除草剤も水田に生育できる植物を制限している原因です。しかし、最大の原因は毎年、春に土壌が徹底的に撹拌されることと、その後、四ヶ月間あまりにわたって常に水が湛えられていることに他なりません。この田植え前に行われる代かきと湛水が移植水田の代表的な耕種的な雑草管理といえます。

田畑転換も耕種的な制御方法の一つです。田畑転換とは、隔年あるいは数年毎に水田と畑を交互に変えることで、用排水設備と暗渠排水設備が完備された圃場は水田にも畑にもなり、同一の圃場でコメもダイズも作れます。まさに農地の高度利用を目的とした基盤整備事業の賜物といえます。

水田から畑に転換することにより、土壌水分が低下してタイヌビエやコナギなどの一年生の湿生雑草やクログワイやミズガヤツリなどの多年生雑草が衰退します。逆に、畑から水田に転換することにより、土壌水分が上昇し、メヒシバやスベリヒユなどの乾生雑草が衰退します。

一〇世紀から一八世紀頃までヨーロッパで行われていた農法に三圃式農業というものがあります。圃場をマメ類、エンバク、オオムギなどを栽培する夏畑、コムギやライムギなどを栽培する冬畑および何も栽培せず休ませておく(きゅう)閑地(かんち)の三種類の畑に分けて、これをローテーションさせるものです。

夏畑、冬畑および休閑地には、それぞれ特定の雑草が繁茂しますが、農地の利用様式を変えると優占雑草も変わり特定の雑草が増えることはありません。なぜなら、作物の種類が変われば耕耘時期(土壌撹乱)、肥培管理(肥沃度)、作物による被圧(群落内の照度)、作物から出される他感作用物質などが変わり、その結果、発生する雑草の種類が変わるからです。

つまり、田畑転換と同じ仕組みで雑草が制御されるわけです。三圃式農業には、地力維持という役割もありますが、雑草防除を考えて作られた農法といえます。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。