以上、3人の「次元の違う人達」について、おおよその解説をしてみた。逐一触れなかったが、次の3点は、共感頂けるのではと思う。

一つは、いわゆる「メンタル面の強さ」は、練習量に比例するのではないかという事である。錦織のセカンドサーブを観ていて一抹の不安感もないのは、膨大な練習量と完璧なコンディショニングの裏付けが観客及び対戦相手に伝わるからではないか。

二つ目は、いわゆる「ヴァーチュオーゾ(巨匠性)」である。これは、如何に大器であるか、そしてそれが大きく花開く世界中で最良の環境を如何に用意できるかにかかっていると思う。その巨匠性がにじみ出るパフォーマンスは、明らかに他とは異なる感動を観る者に与える。

いわゆる「安定性」である。豊かな才能を有する者が、最高の環境で、膨大な練習に励むとき、その人たちの前途を遮るものは何もない。皆さん、こういう人達に惜しみない声援を送りましょう。こういう人達は、日本という国が生んだかけがえのない財産なのですから。

なぜかけがえがないかについては、既にご説明しましたが、こういう人達には、突き当たる壁がなく、どこまでも飛んで行けるからです。こういう人達の一時的な敗北・失敗を目の当たりにしても、「これ以上は無理だな……」などという表層的な理解をしないでください。

例えば、錦織の試合後のインタビューを注意深く聴いていれば、格下の相手に勝った時も笑顔1つなく反省の弁を口にするし、マレーのような大物を食った後でも、疲労感こそ漂わせつつも、同じように反省の弁を口にします。

次元を超えた人達にとっては、一時的な敗北・失敗などの概念は、全く脳裏に存在しないのです。ですから、腐心するのは、「如何に自分のコンディションをベストに持っていくか」、そのうえで、「如何に自分が納得できるパフォーマンスをするか」という事です。

判りやすく言い換えれば、「自分の敵は自分である」と言っても良いでしょう。皆さん、仮にもあなた方が彼らのファンであるのならば、長い目で見守ってあげましょう。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『未来を拓く洞察力 真に自立した現代人になるために』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。