待て、(しこう)して、希望せよ

人は誰でも自分を励ますための自分だけのおまじないの言葉を持っているのではないだろうか。

自分を慰める優しい言葉、自分を励まし、鼓舞するような元気な言葉、自分を少し甘やかしてくれる言葉……「座右の銘」のような、畏まった気持ちで選ぶ改まった言葉とは違い、他の人に言うつもりはない、自分の心のなかの自分だけの秘密のお呪いの言葉。

私にもそんな言葉がいくつかある。落ち込んでいる自分を励ます言葉、生きる姿勢をピシッと立て直そうと思うときの言葉、悲しみながらも甘やかな気分に浸りたいときの言葉……。

そのなかでも私の人生で一番活躍してくれたおまじないの言葉が「待て、而して、希望せよ」というこの言葉である。

若いときに「将来自分はこうなりたい」とか「こんな人生が展開するはず」と想像していたことや思っていたことは何一つ実現しなかった人生だったから、失意や挫折は山のようにあった。

そんな落ち込んだときでも自暴自棄にならず、なんとか真っ直ぐに前に向かって歩いてこられたのはこの言葉のおかげも大いにあったと思っている。

思い込みが激しい分、期待を裏切られ失望したときの落ち込みも激しい。難しい問題が降りかかったとき、努力してきたことが、またまた実現しなかったとき、誰一人助けてくれないと思ったとき……夜更けに一人、ひっそりと「待て、而して、希望せよ、よね」とどれほど呟いたことか。