⑤潤腸湯とは

寺澤捷年著「症例から学ぶ和漢診療学第3版」(医学書院、2012年)から引用すると、潤腸湯は太陰病期(陰証の第1ステージ)に利用される漢方薬で病変の主体が腸にあり、虚実間証(病邪の勢いと体の抵抗力がほぼ同程度の状態)の状態にあり、具体的には体内の血と水が共に不足して、皮膚につやがなくカサカサしている、手のひらや足裏にほてり等の症状がある。また腹部で気の流れの滞りがあり、それが腹部膨満感として現れ、腸の表層に熱証があり、それに水分不足が伴って便秘の症状が現れます。

潤腸湯は血を補い、陰液を増して腸内を潤し、便の通りを良くします。体力が中等度もしくはやや低下した人、特に老人の弛緩性または痙攣性の便秘に用いるとよいとあります。潤腸湯は10種類もの生薬で構成されており、その大まかな役割を示すと下記のようになりますので参考にしてください。

(1)血を補い、陰液を増して潤す。

()(オウ)当帰(トウキ)

(2)腸を潤す。

桃仁(トウニン)麻子仁(マシニン)杏仁(キョウニン)

カマやルビプロストンのように腸内に水分を引き込こんだり、界面活性剤ジオクチルソジウムスルホサクシネートのように便表面張力を下げるイメージ。

(3)便通を促進する。

大黄(ダイオウ)

ビサコジル、ピコスルファートNaやセンノシドのように大腸運動を促進するイメージ。

(4)気の巡りを良くして消化管運動を促進する。

枳実(キジツ)厚朴(コウボク)

モサプリド、ドンペリドン、メトクロプラミドのように消化管運動を促進するイメージ。

(5)熱証部分を冷ます。

黄芩(オウゴン)

(6)諸薬を調和する。気を益す。

甘草(カンゾウ)

⑥まとめ

今回取り上げた酸化マグネシウムは、昔から作用の穏やかな便秘薬として利用されています。しかしそれは腎臓の機能が正常に働いている人に限られます。年齢とともに腎機能が弱ってくると、副作用を起こしやすくなるタイプの薬の一つです。効果もないのに漫然と薬を利用するのはやめておきましょう、という典型例を紹介しました。