さらに、商品および産業・事業者ベンチマーク制度の基本も、国内の業界内で

の同業者間競争を促していますが、それがこれからのグローバルな時代にどれほど有効なのでしょうか。脱炭素化という世界的な潮流によって、特にエネルギー使用量の大きな重厚長大産業は、2050年までの30年間において自らの業種そのものの見直しのような大胆な業態転換も避けて通れなくなっています。そんな厳しい状況下で、果たして国内での狭い範囲での同業者とのベンチマーク比較がどの程度意味を成すのでしょうか。むしろ、どのように事業の売上・業績を伸ばし、同時に炭素を出さないようにするという大変難しい経営判断をしていかざるを得ない経営陣が注目すべきデータや指標を、省エネ法でも積極的に採用していくべきではないでしょうか。

また昨今の傾向として、そうした脱炭素経営を標榜するグローバル企業は、投資時の企業評価として環境(E:Environment)・社会(S:Social)・企業統治(G:Governance)、を重視するという、いわゆるESG投資家を強く意識した経営を進めなくてはなりません。省エネ法が目指すべき方向性も、そのような経営者を側面から支援・応援できるようにしたいものです。

例えば、ESG投資家は、評価したい企業がその所属する国内業界における動きや地位など、あまり気にかけることはないでしょう。むしろ、個別企業がいかなる脱炭素に向けたビジョンと事業を成長させるグローバルな事業戦略を立案して、より具体的に実行へと移していけるか、その実現可能性と事業自体の持続可能性(サステナビリティ)をしっかり見ていくこととなります。

経営者は、そうした要請に応えるためにも、ESG投資家等にアピールできる指標を欲することとなるでしょう。それこそが、エネルギー生産性(EP)であり、炭素生産性(CP)になるのではないか、筆者として強調したい主張はその点であり、今後の省エネ法をどうしていくかという前向きな議論においても、EPやCP的なニュアンスも加味した対応を期待したいものです。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。