第2章 リズムメイク

7. 「リズム」と「テンポ」

テンポが与える印象

リズムとはパターンのことであり、テンポとは速度のことです。

リズムのよい編集と聞くとテンポの速い編集をイメージしますが、速いテンポが必ずしも心地よいリズムを生むわけではありません。

音楽用語でテンポのことをBPM(Beats Per Minute)といいます。BPMが100だとしたら1分間でビートを100回刻みます。人間の心拍数は平常時でBPM60〜90程度、ランニング時でBPM120前後になります。

アップテンポなノリのよい曲はBPM120〜190程度、ミディアムスローな曲はBPM60〜100程度です。

速いテンポの曲を聴くと興奮して動きたくなったり、スローな曲を聴くとリラックスしたりするのは体が音楽のテンポに同調しているからです。

音楽と同様に映像もアップテンポのリズムは情動を喚起させ興奮状態にさせます。それに対してスローテンポのリズムは鎮静、情緒、高級感など落ち着いた印象を与えます。

スローテンポは「画の質」が重要

アップテンポの編集はテクニックが必要だから難しいと考えている人は多いようですが、表現としてはスローテンポに仕上げるほうが圧倒的に難しいのです。

適切なカットの長さは撮影素材に含まれている「情報量」と「画の質」によって変わってきます。質とは解像度、色深度、美しい構図、魅力的な被写体などです。

「画の質」が高ければアップテンポかスローテンポかを選ぶことができますが、「画の質」が低いとスローテンポを選択することが難しくなってしまいます。

スローテンポで落ち着いた雰囲気を出したい場合は編集技術よりも素材の質が重要となります。

8. 「動的表現」と「静的表現」

動と静の使い分けが重要

映像は動きと変化の要素で構成されます。動きが多い、テンポが速いなどの「動的表現」は情動喚起を促し、視聴意欲を向上させます。

それに対して写真のように動きが少なく、テンポが緩やかで長時間変化のない「静的表現」はリズムを感じにくいため映像表現ではあまり多用されません。

しかし「静的表現」は動きが少ないからこそ画面に対しての集中度が増し、見る人の思考と想像を喚起させやすいという特徴があります。

「動的表現」は情動を喚起させる
「静的表現」は思考と想像を喚起させる

テンポの速い「動的表現」は、情報密度が高くおもしろみが強いため多用されますが、情動をかきたててばかりになるので脳が疲れてしまいます。

視聴者にゆっくりと考えてもらったり想像してもらったりするために、動きや変化の少ない「静的表現」で意図的に間を作ることも考慮に入れなければならないのです。

「動的表現」と「静的表現」をバランスよく使い分け、リズムとテンポに緩急をつけることで視聴意欲を持続させながら、内容に対しての理解を促進させることができます。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。