1.細胞体(核や樹状突起が存在しています)

❶物質的機能:

核内DNAの情報に基づき、神経伝達物質の合成に必要な酵素、神経ペプチド、その他タンパク質を合成する場になります。

❷電気的機能:

樹状突起には他の神経終末とシナプスを形成し、さまざまな神経伝達物質に対する受容体とそれに連動するイオンチャネルが多数存在しています。他の興奮性神経終末からの神経伝達物質の受容体への結合はNaチャネルを開口し、細胞内にNa+を流入させ細胞内電位を+側に傾けます。

一方、抑制性神経終末からの神経伝達物質の受容体への結合はClチャネルを開口し、細胞内にCl-を流入させ細胞内電位をより-側に傾けます。細胞体と軸索のつなぎ目にはNaチャネルが豊富に存在しており、細胞体内の電位の総和の結果が+であればNaチャネルが開口し活動電位が発生し、-であれば活動電位は発生しません。

2.軸索(髄鞘が付いている軸索は有髄神経と呼ばれ、ない軸索は無髄神経と呼ばれます)

❶物質的機能:

軸索は細胞体内で合成され小胞にくるまれた各種タンパク質を軸索流に乗せて神経終末へと移動させる通路になります。その移動速度は1日数cm程度でしかありません。

❷電気的機能:

髄鞘はシュワン細胞が幾重にも軸索に巻き付いた構造をしています。シュワン細胞はスフィンゴミエリンと呼ばれる脂質に富んでいるため、イオンの透過性が極端に悪くなり髄鞘部分は実質絶縁体となっています。髄鞘と髄鞘の間のくびれた部分はランビエ絞輪と呼ばれるシュワン細胞がない部分で、ここにはNaチャネルが豊富に存在し軸索内の電位変化に反応してチャネルを開口してNa+を軸索内に引き込み、活動電位を発生します。細胞体と軸索のつなぎ目付近で発生した活動電位は、髄鞘を飛び越えた形で神経終末へと伝達していきます。これを跳躍伝導と呼び、電気信号を無髄神経より格段に速く伝えます。小さな無髄神経の伝導速度が0.25m/秒に対して大きな有髄神経では、100m/秒の速度にまで達します。

3.神経終末(活動電位による細胞内電位変化で開口するCaチャネルが存在しています)

❶物質的機能:

細胞体から軸索を通ってきた神経伝達物質合成酵素により神経伝達物質が合成されて、小胞内に蓄えられます(一部の神経伝達物質は細胞体でも合成される)。小胞に包まれて移動してきた神経ペプチドも終末で蓄えられ、放出されるときを待っています。

❷電気的機能:

ランビエ絞輪を跳躍してきた活動電位(細胞内電位の正電位化)の影響を受けて、Caチャネルが開口し、細胞外からCa2+が神経終末に流入してきます。Ca2+は小胞に働きかけ、小胞の終末部膜への融合、さらに内容物の放出へとつなげます。かくしてその神経細胞専用の神経伝達物質や神経ペプチドが次の樹状突起にある受容体や標的細胞をアタックして、神経を介した情報が次々と伝わっていきます。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『知って納得! 薬のおはなし』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。