第2章 リズムメイク

5. 「ビート」と「フック」

安定感を生み出す「ビート」

変化による一定のリズムパターンを「ビート」と呼びます。ビートとは音楽用語で拍を意味し音の規則的な刻みのことです。映像は自由リズムなので規則的な刻みはありませんが、一定パターンのくり返しによってビートを作り出すことができます。

[図1]一定パターンを繰り返すのがビート

上の絵コンテは2人の会話シーンを2ショットとそれぞれのソロショットで構成しています。

2ショット→1ショット→1ショットをくり返しています。この一連の共通した編集パターンが「ビート」です。

ビートは一定パターンのくり返しなので、視聴者との同調を生み出し、催眠術のように意識を引き込んでいきます。それが没入感に変わり、映像への集中度が増していくのです。

「フック」でアクセントを加える

ビートは安定を生みますが飽きるのも早く、時間の経過とともに没入感は失われていきます。そこで安定した流れを適度に崩して刺激を与えていきます。この刺激的要素を「フック」といいます。

フックは「引っ掛ける」という意味があり、単調な流れにアクセントを加えたり、冒頭シーンで注目を集めたりするなど瞬間的に情動喚起させる要素を指します。

あまりに流れがスムーズすぎると長い直線が続く高速道路のようにボーッとしてしまいます。くり返しのなかに適度な変化と刺激を加えることによって、視聴意欲と集中力を持続しやすくなります。

先ほどの流れにフックを加えてみましょう。

[図2]単調な流れのアクセントとなるフック

人物Aと人物Bの2ショット → 人物Aの1ショット → 人物Bの1ショット → それを見ている人物Cのカットが加わるとフック
となり、流れにメリハリが生まれます。

ただし、フックはたまに入るから効果的なのです。あまり回数を増やしてはいけません。フックを増やしていくと、今度はフック自体がビートに変化します。

目を引くようなインパクト重視の映像を作るには刺激の強いビートが必要です。しかし先ほどもいったとおりリズムメイクは普通のリズムを作り出すことが基本ということを忘れてはいけません。

視聴者に規則性を感じさせてはいけない

映像リズムはビートとフックによる一定の規則性によって作られます。

しかし、その規則性を視聴者に気づかれてはいけません。視聴者が規則性に気づいてしまえば、それは人為的かつ機械的なものと判断され編集という存在を意識させてしまいます。

映像編集は不規則でルールがないセンスまかせのものと視聴者を騙さなければならないのです。そのため編集時は規則性のなかに不規則性を混ぜ、視聴者にランダム感を与える必要があります。

この規則性と不規則性のバランスがリズムメイクの最も難しい調整といえるでしょう。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。